英語のプレゼンをするにあたって、どうすれば外国人の聴衆にも伝わる良いプレゼンができるのかわからない、どんな表現を使えば効果的なプレゼンができるのかわからないという人のために、この記事では英語プレゼンの構成のポイントと英語プレゼンで使える便利な英語表現についてお話していきます。聞き手は構成の明快な情報をより正確に記憶することができると言われています。せっかく多くの人に聞いていただくプレゼンなのですから、メッセージが伝わり記憶に残るものにしたいですよね。
私はバイリンガルMCとしてお仕事させていただくと同時に、海外でプレゼンをされる日本人のクライアントさんのアドバイザーとしてのお仕事もしてきました。また、自分のプレゼンスキルを向上させるためにロンドンで行われているワークショップにも定期的に参加しています。そこで学んできたことをみなさんとも共有できればと思っています。
プレゼンを構成する前に考えるべきこと
プレゼンの目的は何か?
英語環境でのビジネスコミュニケーションが、日本語環境におけるコミュニケーションともっとも異なるのは、「形式」や「調和」といったものよりも「目的」や「行動計画」が明確であることを求められる点です。要点を網羅したように見えても、「一体何が言いたかったの?」と思われるようなプレゼンではアピールが弱いのです。また英語の文法など細かいところばかり気にしても、一番伝えたいことが伝わっていなければいいプレゼンとは認めてもらえません。
欧米の聴衆はプレゼンやスピーチのキーメッセージに対して非常に敏感で、それを探しながら耳を傾けています。あなたのプレゼンを通して伝えたいメッセージは何か、聴衆に起こして欲しい行動は何なのか、今日は何を覚えて帰ってもらいたいのか、ということをしっかりと考え明確にした上で、その目的に向かってプレゼンを構成していくことが重要です。
プレゼンを聞く聴衆は誰か?
プレゼンを聞く聴衆が誰であるかということを明確にしておくことも大切です。どんな相手に対してプレゼンをするかによって、適切なプレゼンというのが大きく変わってくるからです。例えば、ブロックチェーンのプレゼンをしてほしいと頼まれた場合、プレゼンをする相手がその業界のエンジニアたちなのか、それとも基礎知識のない一般の人なのかによっても、テーマ設定や専門用語の用語解説などかなり異なってくるはずです。
聞き手がどんな業種の人たちなのか、またどんな会合の中で行われるプレゼンなのかによっても、プレゼンは大きく変わってきます。金融関係の会社などフォーマルな場所なのか、それともファッションやデジタルメディアなどクリエイティブな人の集まりなのかによって、スライドの作り方から話し方のトーン、さらにはユーモアを入れる度合いまで変わってきます。
また、どれくらい聴衆との絡みを入れるかも考えておく必要があります。聞き手に質問を投げて挙手を求めるなど、インタラクションを入れることでエンゲージ力を強めることができますが、収容人数の多いホールなどなどそれをするのに適していない場所もあります。
プレゼン時間の長さ
プレゼンに与えられる時間の長さも、構成を考える上での重要な要素です。時間の長さによって、大枠の概要だけを話してまとめた法がいいのか、それぞれの項目の深入りした内容を伝えられるか、ということも変わってきます。
一般的に1分間に人が話す英単語の数は125−150語程度と言われています。私自身がプレゼンで話す時のペースは1分間に125語くらいです。英語がそれほど流暢でないと感じる人だとこれよりもう少し少なくなります。プレゼンの場合普段の会話よりゆっくり目に話したほうがいいので、日本人なら1000語程度で10分くらいというのが目安になります。
かなり長いプレゼンをしなければいけない場合は、大きな一つのプレゼンをしようとするのではなく、テーマごとの小さなプレゼンの積み重ねとして構成していきます。一般的なプレゼンの構成は次の項で詳しく見ていきますが、挨拶と質疑応答部分を以外の要素を1セクションとして、それを積み重ねる形で全体を構成するとよりわかりやすいプレゼンにすることができます。
プレゼンをする環境
プレゼンをする場所がどんな場所なのかを確認しておくことも重要です。会場の収容人数の他に、スライドを表示させられるのか、プロモーション動画を見せられるのかなど、AV周りのことを確認した上でプレゼン準備をしましょう。スライドを使うかどうかによっても構成は異なります。
基本的にスライドに書かれていることは読み上げないというのがプレゼンの基本ですが、聴衆がスライドを読んで理解するだけの間を与える必要があるので、それもプレゼン時間のタイムキーピングに反映させるようにしてください。
一般的な英語プレゼンの構成
一般的なプレゼンは以下の5つの要素から成っています。
- 挨拶
- 冒頭
- 本論
- 結論
- 質疑応答
それではそれぞれの構成要素の内容について順番に見ていきたいと思います。
1. 挨拶
プレゼンを始める前に、まずは聴衆に挨拶し、自己紹介をします。聴衆が同僚なのか、それともあなたのことを全く知らない人なのかによっても変わってきますが、一般的には以下を簡潔に述べます。
・名前
・プレゼンにあたって自分が代表している団体名
・プレゼン内容に関係ある自分の専門分野が何なのか
細かく説明する必要はありませんが、特に専門分野については聴衆があなたの話を聞く理由や信頼の担保にもなります。「その分野で活躍している専門家の話なら参考になるだろうからぜひ聞いてみよう」と思わせるだけの説明は入れる価値があります。
これを表現する英文としては次のようなものがあります。
- My name is Yuko Suzuki.
- I am the founder and director of Cerise Works Ltd.
- I work for Cerise Works Ltd.
- My expertise is business communication in multilingual setting.
- I am communication specialist in multilingual setting.
2. 冒頭
挨拶と自己紹介に続いて、プレゼンのテーマと目的について話していきます。
・インパクトのある出だし
・テーマ設定
・問題や困難
・プレゼンの意義、目的
・全体のプレビュー
テーマやトピックの紹介は聴衆が真剣に考えてくれそうな質問や、共感してくれそうなエピソード、聴衆が驚きそうなデータ、聴衆が興味を惹かれる引用などから始めるのが効果的です。例えば、
- What is the most important thing in your life?
と質問すれば、聞いている人は各々に自分の考えを頭に浮かべるでしょう。あるいは、
- One in six women say they would rather be blind than obese.
といえば聴衆は衝撃を受けてあなたのプレゼンに興味を持ちます。冒頭の最初の一文はプレゼンのインパクトを左右する重要なセンテンスです。ぜひあなたの創造性をフルに発揮して見てください。そのセンテンスを元にプレゼンの中で話していくテーマ設定をしていきます。
続いて、設定したテーマにおいて今何が問題なのか、あるいはどんな困難に直面しているのかについて話します。それを踏まえて、このプレゼンの意義や目的を明確にします。多くの場合、問題や困難を分析し解決策を考えるということになります。ここで簡潔に問題解決の答えを言ってしまってもいいのですが、頭ごなしに反対する人もいるため、例や根拠を述べた後に結論を述べるほうが安全と言えます。
プレゼンの意義、目的を明確にする際に使える表現には以下のようなものがあります。
- I will argue —.
- I will analyse —.
- I will evaluate —.
それからプレゼン全体の概要を簡単に説明します。ここでプレゼンの長さや資料がある場合はその説明をします。参加型のプレゼンであれば聞き手の参加を促しておくようにしましょう。全体のプレビューの話をするときに使える表現としては、
- In the first part of my speech, I would like to describe —.
- In the second section, I would like to discuss —.
- In the final part, I would like to compare —.
などがあります。こちらもあまり形式にとらわれないように、自分にとって一番言いやすい言い回しを選びましょう。そこから本論に移るときに使えるトランジション表現としては、
- Now you’re aware of the overview.
- First, let’s begin with —.
- To get started, let’s look at —.
- First of all, let’s have a look at —.
- My first point covers —.
などがあります。
3. 本論
ここでは、冒頭部分で述べた問題や困難、あるいはプレゼンの目的となるキーメッセージを支える根拠や例についての話をしていきます。一般的に1つのテーマやセクションにつき、根拠や例となるポイントは3つを目安に構成するとよいと言われています。根拠となる事柄は多い方が良いように思いますが、人が一度に記憶できる内容に限りがあるため、3つを基本に考えるとより印象に残るプレゼンにすることができるのです。この3つのポイントは、優先順位、テーマ性、時間軸などに従って順序立てるようにしてください。
本文ではプレゼンのキーメッセージや目的を支える論拠や例を示していく上で、3つのポイントを基本に考えるのが良いと言いました。その3つを列挙する上でよく使われるのが、
- Firstly
- Secondly
- Finally
という表現ですね。もっともスタンダードなもので、誰もが3つの点のそれぞれを認識してくれる表現です。セクションが長くなって3つのポイントの構造がわかりにくくなりそうな時は、
- To prove this point, we have three reasons: A, B and C.
のように、先に3つの理由を列挙しておいた上で、それぞれの理由の詳細を述べていく方法も、プレゼンを聴衆の記憶に残りやすくするテクニックです。次のパートに移るときは、
- Now I’d like to move on to the second part of presentation which looks at —.
という表現を使うとスムーズに進めることができます。
また複数のテーマについて話していく場合には、それぞれの項の終わりごとに小さなまとめを入れていくとよりわかりやすくなります。短時間に情報量が過多になると、聞いている人がついて来れないことがあるので、問題解決やキーメッセージに対して直接関係ないことは省くようにしましょう。
実際のスピーチを書き始める前に、問題解決の方法やキーメッセージをまず箇条書きで書き出し、次にそれを支える根拠や例を再び箇条書きで書き出して見ましょう。それを元に各項目の説明していくと構成が明快なプレゼンになります。以下のようなイメージです。
・セクション1
・根拠1
・根拠2
・根拠3
・セクション2
・根拠1
・根拠2
・根拠3
・セクション3
・根拠1
・根拠2
・根拠3
4. 結論
結論部分はここまでに話してきたことのまとめですが、プレゼンを通して共有してきた専門知識を聴衆の心にしっかりと残し、そこから実際の行動を促し、さらにはモチベーションを高める大切な項目です。結論では主に以下の3つのことを話していきます。
・冒頭部文で述べたプレゼンの目的を再確認する
・本論部分で述べた主な論点を要約する
・論点に基づいた行動を促す
長いプレゼンの細かいポイントにフォーカスしているうちに、聞き手がそもそもの目的を忘れてしまっているかもしれないので、プレゼンを通して解決したかった問題やなぜ細かいポイントを見てきたかについて再確認してあげるとわかりやすくなります。さらに要約した形で主な論点を簡潔におさらいします。そうすることによって各論点が聴衆の記憶に残りやすくなります。
最初に述べたプレゼンの目的を再確認した後、次のような表現を使って話してきた概要をリキャップすることができます。
- In the first part of this speech, we have covered —. In the second part, —.
- To summarise, —.
- There were three points that I covered in this presentation. —
さらに話を聞いてわかったというところで終わらないために、このプレゼンを見た人が問題解決のために取れる行動を示し、モチベーションを高めてあげることで、プレゼンの意味が大きく増していきます。聞き手に何かいいことを聞いて得したという印象を持って帰ってもらえるといいですよね。
論点に基づいた行動を促す言い回しとしては以下のようなものが使えます。ただ、こちらも形式にとらわれず創造性を働かせて、聴衆のインスピレーションを奮い立たせるような言い方を考えていただきたいと思います。
- Now, I would like you to —.
- There are things that you can do to achieve —.
- The key takeaways are —.
- I would strongly recommend you to do —.
5. 質疑応答
最後に聴衆に対して謝辞を述べ、質疑応答に移るのが一般的です。欧米のプレゼンでは、与えられた時間の中で、結論まで簡潔にして早く切り上げ、質疑応答にできる限りの時間を当てるという形のプレゼンをする人もいます。登壇者が想像で言いたいことをいうよりも、聞き手が本当に聞きたいことに答えることができる形式だからです。
日本人にとって質疑応答は一番不安な要素かもしれません。私のクライアントさんの多くが、プレゼンはご自身でなさっても、質疑応答のために一緒に登壇してほしいと言います。日本の文化はものごとを非常に入念に準備するという素晴らしいものですが、計画から逸れて何かをしなければいけない状況に置かれたとき弱いのが日本人です。柔軟性がないのと、機転が効かないのは、多くの人に共通しています。
よって質疑応答をプレゼンのメイン部分にするのはおすすめしませんが、肩の力を抜いて自分の知識の限りのことを、自分の言葉で伝えようとしてみてください。それが最大の誠意ですし、聴衆もそれが一番聞きたいことなのです。
質疑応答を始めるための表現には以下のようなものがあります。
- Now I would like to invite questions.
- Now I would like to open the floor for questions.
名前がわからない人を指名するときに使える表現には以下のようなものがあります。
- The gentleman over there
- The lady with glasses
- The young gentlemen in a blue shirt
質問を止めたいときは以下のように言いましょう。
- I would now like to stop and take questions from the audience.
タイプ別のプレゼン構成
問題解決型
- 冒頭:問題や困難となっていることの説明
- 本論:問題や困難に対する解決方法
- 結論:解決策を実施した結果、行動を促す
ここまでの項目で説明してきたプレゼンは、この問題可決型を元にしています。問題や困難を解決するという形はプレゼンの目的が明確になりやすいため、非常に使いやすい形だと言えます。映画やドラマ、小説などの多くのストーリーもこの形を取っています。
ピラミッド型
- 冒頭:主張、メッセージ
- 本論:主題やメッセージを支える根拠や例
- 結論:証拠や例を踏まえた主張の妥当性確認
プレゼンは必ずしも問題解決型をとる必要はありません。伝えたいこと、主張、メッセージを軸にして、その主張を支える根拠や例を元に議論を展開していくこともできます。根拠の中には、統計、データ、経験談、引用など、さまざまな物を効果的に入れていくことができます。
デモンストレーション型
新商品の紹介などをする場合、上記のパターンに当てはまらない場合もあります。そういった時に使うのがこのデモンストレーション型です。多くの人がかける問題を解決するような発明なのであれば、問題解決型と重なるところもあります。
- 冒頭:商品の価値、なぜ必要なのか、どんな問題を解決するのか
- 本論:イントロで述べたことを支える商品機能をデモンストレーションしながら見せる、その他の使い道を示して聴衆の好奇心をそそる
- 結論:デモの要約と妥当性確認、行動を促す
これで明快でわかりやすいプレゼンを構成することができるはずです。欧米のプレゼンでは元となる原稿の準備ももちろん大切ですが、その伝え方も非常に重要です。話し方については以下の記事をご参照ください。
いろいろな言い回しをご紹介してきましたが、ここに書かれていることにとらわれずに、あなた自身が持っている想像力を生かして素敵なプレゼンをしていただきたいと思います。いつも言っているように、日本人は形式にとらわれすぎです。欧米の人が求めているのは、あなたの個性であり、面白いアイディアであり、熱意を持って話されるプレゼンです。それがあれば少しくらい英語が間違っていても何の問題もありません。そのことを忘れずにプレゼンに臨んでくださいね。幸運を祈っています!