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イギリスのうなぎゼリーとは?【美味しい?まずい】

    イギリスには「うなぎのゼリー寄せ」なる奇妙な料理が存在します。日本人が考える香ばしい蒲焼などのうなぎ料理とは一転して異なり、どろっとしていてイギリス人にすらちょっと気持ち悪いと思われているような料理です。

    筆者のパートナーはイギリス人ですが、家族で日本旅行をした際にも、うなぎとあなごは食べられないと手をつけませんでした。この記事では、イギリスで隠れ名物とされる「うなぎゼリー」とは一体どんな料理なのか、謎を少し紐解いてみたいと思います。

    イギリスのうなぎゼリーとは?

    うなぎのゼリー寄せ

    イギリスには「うなぎのゼリー寄せ(Jellied Eels)」なる奇妙な料理が存在します。これは、スパイスを効かせたスープのとともに、うなぎをゼリー状の食感に固めて仕上げた英国の伝統料理です。この料理は歴史的にロンドン、特にイーストエンドと呼ばれる東ロンドンのエリアで人気があったそうで、かつてパイやマッシュの店や魚屋などでよく売られていました。

    うなぎゼリーを作る工程

    うなぎのゼリー寄せを作るプロセスとしては、水、酢、ハーブ、スパイスなどの材料を含むスープの中ででうなぎを調理します。 うなぎは柔らかくなるまで煮込まれ、うなぎの皮や骨に含まれる天然のゼラチンの働きにより、液体が冷めて固まるとゼリー状になるという性質を使ってゼリー状になっています。

    うなぎと液体が冷めると、うなぎの切り身が風味豊かなゼリーの中に懸濁された、冷たいゼリー状の調合物が出来上がります。うなぎの肉は柔らかいものから少し噛み応えのあるものまでさまざまで、通常は冷やして出されます。

    うなぎゼリーに合わせるソース

    うなぎのゼリー寄せは、その風味と食感を楽しむために、シンプルに食されることが多いようです。でも、フィッシュ・アンド・チップスにかけるようなモルトビネガーやワサビのようなピリッとした辛味のあるホースラディッシュソース、さらには小麦粉や牛乳を混ぜて作る白っぽい緑色のパセリソースなどをかけて食べられることもあるそうです。

    うなぎゼリーに関する疑問

    イギリスのうなぎゼリーは美味しいのか?

    筆者はイギリスのプレミアリーグのウェストハムというチームに関するテレビリポートの一環で、過去に東ロンドンのパイ屋さんでうなぎゼリーを食させていただいた経験があります。うなぎゼリーが美味しいかという疑問に単刀直入にお答えするのであれば、私は美味しいとは思いません(笑)。

    ハーブを入れて煮込んだとはいうものの、それほど風味が豊かなわけではなく、どちらかというとどろっとした魚の水煮の缶詰を温めもせずに食べたというような雰囲気で、生臭さの方が先行していた記憶があります。

    私が出されたうなぎのゼリー寄せには、パセリのソースが付いてきました。お店の人から東ロンドンでパイなどにもかけて食べる名物ソースと言われたので、このパセリソースを付けて食べてもみましたが、ソースの方も小麦ベースで調味料あまり入れないで作ったホワイトソースにパセリ風味がついたようなどんよりとした味付けで合わせても締まりがなく、どこにも行きつかない味という感じでした(苦笑)。

    イギリス料理の美味しいまずいについては以下の記事も併せてご参照ください。

    イギリス人はうなぎゼリーをよく食べる?

    うなぎゼリーが口に合わなかったのは、筆者が日本人だからということもあるかもしれませんが、イギリス人に聞いてみても、そもそも食べたことがある人自体が少なく、食べてみたいと思うよりむしろ気持ち悪いという反応される料理です。

    実際うなぎのゼリー寄せの人気は年々低下しているそうで、現在では昔ほど一般的に消費されていないと言われています。 ただし、特定の伝統的なパイ屋さんなどをはじめとする英国料理店やシーフード料理店では今でも提供されています。実際私も取材時に、イーストエンドの飲食店を軒並み当たってうなぎを扱っている店を探し出しました。

    うなぎのゼリー寄せは好き嫌いはともかく独特の食感と風味があり、伝統的なイギリス料理として特にロンドンのイーストエンドでは文化的、歴史的意味を持っている、というところでしょうかね。食べてみたいという人はぜひ東ロンドンのパイ屋さんなどを当たってみてください。

    イギリスに他のうなぎ料理はある?

    現在のイギリスでうなぎは主流の食材ではありませんが、昔は東ロンドンのテムズ川流域で親しまれていた食材で他にもいくつかうなぎ料理があるようです。うなぎのゼリー寄せと同じような方法でうなぎをスパイスやハーブで調理したものを、パイ生地で包んで焼いたり蒸したりしたイールパイ(うなぎパイ)と呼ばれる料理もあります。伝統的な料理で、20世紀初頭まで人気がありましたが、現代ではあまり一般的ではないそうです。

    その他スモークしたうなぎなどもあります。イギリスのホテルなどでもキッパーなどの魚がスモークされた形でサーモンなどと同様にハムやチーズと一緒に並んでいることがあります。現在うなぎは一般的ではありませんが、同様の風味や食感で魚として食べられていたことは想像できると思います。

    イギリスのうなぎはどこで獲れる?

    歴史的にヨーロッパウナギ (anguillaとも呼ばれる) は、英国周辺のさまざまな水域で捕獲されていました。 しかし、生息地の喪失、汚染、乱獲、海流の変化などの要因により、ヨーロッパウナギの個体数は大幅に減少しています。 その結果、ヨーロッパウナギは現在、絶滅危惧種に指定されています。

    ヨーロッパのウナギの個体数が減少しているため、ウナギの種を保護し、その回復を促進するために厳しい規制が設けられています。よってヨーロッパウナギの捕獲と取引は、絶滅の危機に瀕している野生動植物の種の国際取引に関する条約(CITES)などの国際協定に基づいて厳しく管理されています。

    イギリス人は動物愛護精神に非常に敏感な国民ですから、そういった意味でもうなぎはあまり食されなくなっているのかもしれません。イギリス人の動物愛護の精神の観点からの食文化については、以下の記事も併せてご覧ください。

    まとめ

    結論から言うと、うなぎのゼリー寄せは筆者が個人的にオススメする料理ではありません。イギリス人も現在一般に属する料理ではありません。どうしても食べてみたいという方は、東ロンドンのパイ屋さんを当たってみるのが良いと思います。せっかくなのであればパセリソースなどもかけて食べてみてくださいね。