キュナード(Cunard)のクイーンエリザベス(Queen Elizabeth)は世界トップレベルの豪華客船として名高いイギリス船籍のクルーズ船です。近年日本発着の航路ができたことでも注目を集めていますよね。
その船でのゲストスピーカーとしてご招待いただくという嬉しい機会に恵まれて、筆者は1歳の娘とイギリス人のパートナーを連れて、クイーンエリザベスのプリンセス・グリルでの8日間のクルーズを体験して参りました。
実は私も家族もクルーズ初体験。東京から出発し九州各地と釜山を回って横浜に戻るコースに乗せていただくに当たって、イギリスから飛行機で飛んでの乗船だったため、日本に着くまでにみんなでちょっと疲弊してしまったのですが、世界最高峰の豪華客船を存分に体験させていただいたので、そのレポートをブログ記事としてまとめておきたいと思います。
ちなみに、キュナードでは「Cruise(クルーズ)」という言葉は使わないそうで、キュナードの船旅は「Voyage(航海)」と呼ばれます。また、乗客は「Passenger」ではなく「Guest」、客室は「Cabin」ではなく「Stateroom」と呼ばれます。世界最高峰の豪華客船では、用語の点でも普通のクルーズ船とは一線を引いているのが面白いですね。
キュナード客船でのドレスコード
キュナードの船に乗船するに当たって一番気になるのはドレスコードではないでしょうか?筆者もお仕事依頼をいただいた際、まず先に一体どんなものを着ていけばいいの?どんなドレスを用意していけばいいの?と疑問に思いました。
イギリス人から聞いた話だと、オーストラリア人が日中ビーチサンダルでうろうろしているからそれほど気にしなくて大丈夫だよとのことでしたが、それでも場違いな格好で乗船したくないと思うとリサーチしてしまいますよね。
乗船日の服装
世界最高峰の豪華客船といっても、船上にいる時には常にあらたまった格好をしていなければいけないというわけではありません。まず、乗船した日ですが、15時間のフライトを経て1歳児を連れてロンドンから到着した私たちに、フォーマルな格好は到底ムリでした(笑)。一応スニーカーは脱いでローファーにしましたが、旦那はカジュアルでこんな感じです。筆者的にちょっとこれはカジュアル過ぎ?と思いましたけどね。
日中の服装
午前中から午後のティータイムくらいの時間までは、実際のところジーンズやショートパンツを履いて船内を歩いている人もいました。シャツやジャケットにジーンズであれば浮かないと思いますし、またプールやテラスに出るときには、ショートパンツにビーチサンダルのような格好もありなのかなという印象でした。
さらに、どこかの港に入港し散策に出かけるような日は、外に出る時もずっと正装というわけにはいきません。日中は活動しやすい服装で過ごし、夕方から夜にかけてフォーマルな服装に着替えるというのが慣例のようです。夜は肌寒いので、ドレスの上に外に出る時はカーディガンなどを羽織っていました。
夕方からの服装
夕方からの服装も、ものすごくフォーマルな日とそれほどでもない日があります。キュナードのクルーズでは最低2夜のテーマナイトがあるそうで、夕方以降は指定されたテーマやカラーの服装で部屋の外に出る必要があります。テーマナイト以外の日であればちょっとしたジャケットや、カクテルドレスでも十分だと思います。写真だとよくわかりませんが、これは膝丈のカクテルドレスです。
テーマナイト
テーマナイトはブラックタイと呼ばれるようなフォーマルなドレスコードに即した格好がふさわしいようですが、正直なところみんながみんなブラックタイというわけではなかったように思います。年齢層的にも女性はロングドレスの方が多かったように感じましたが、カクテルドレスでもそれほど浮かないと思いました。
ちなみに、私たちが乗船した航路には、ブラック&ホワイト、レッド&ゴールド、マスカレードの3つのテーマナイトがありました。こちらの写真はレッド&ゴールドナイトのものです。
子連れだったのでマスカレードは子供が怖がったこともあってマスクはしませんでしたが、船内でもマスカレード用のマスクが売られいて購入することもできます。またドレスアップした人たちがいる船内を歩き回るのはそれだけでも楽しかったですよ。
豪華客船クイーンエリザベスの食事
グリルレストラン
グリルスイートの部屋を予約すると、グリルレストランと呼ばれる一般客のレストランとは別の階にあるレストランで食事をすることができます。グリルクラスにも2種類あって、クイーンズグリルとプリンセスグリルがあり、クイーンの方が上でレストランは分かれていますが、テラスやプールなどは両方のグリルクラスを通して共通です。
グリルレストランでは、朝昼晩食事をすることのできる自分の席が決まっています。レセプショニストは個々の客をの名前も覚えているようで、食事に上がっていくと毎日名前含んだ挨拶で迎えられました。レストランのメニューは日々変わり、その場で選ぶことができます。食事のレベルとしては、ミシュランクオリティではないけど、美味しいというレベルでしょうかね。
でも、プリンセス・グリルで最もプリンセスらしいおもてなしを受けたのは、1歳の娘だったと思います。もちろんグリルにお子様メニューはないわけですが、私たち家族のことを気にかけてくださるウェイターの方々が、前日に個別の幼児食メニューの提案をしてくださり、シェフに取り次いでくださったのです。よって娘は、通常のメニューにないカスタムメイドのディナーを毎日いただいておりました。
新鮮で柔らかいタラのムニエルなど、目を丸くして頬張りました。それでいて、大人用にトリフのパスタが出た時は、その匂いを鍵つけて手を出し、お気に召してしまったようで、手掴みでパパのお皿から奪い取り一皿ぺろりと平げておりました。小さな子供の例は例外的なものかもしれませんが、一人一人の客に向き合うおもてなしというのに、キュナードの行き届いたホスピタリティ精神を感じました。
リードレストラン
私たちはプリンセス・グリルの客としてグリルレストランを利用することができたわけですが、1歳の子供を連れてとなると、なかなか前菜、メインコース、デザートと3コースを食べ切るまで大人しく席に座らせておくことが難しく、グリルレストランよりもカジュアルなリードレストランもたくさん利用させていただきました。
こちらは朝昼晩ご飯全て食べられるビュッフェ形式のレストランで、グリルクラス以外の客が利用する場所になっています。前菜とメインコースは頑張ってプリンセス・グリルで食べて、その後娘と一緒にリードレストランに降りてきて、さまざまなデザートをつまみ食いするのを筆者は密かな楽しみにしていました(笑)。
このレストランでは、ランチとディナーの間にアフタヌーンティーも出されるため、午後のお茶の時間に小腹がすいたというときは、ここにきてスコーンやケーキをいただくのもおすすめです。
ルームサービス
朝食は追加料金なしで自分の客室でルームサービスとして食べることができます。朝ごはんメニューのリストの中から、食べたいものに印を入れて、前夜までに部屋のドアのところにかけておくと、翌日指定した時間に朝食が運ばれてきます。
オレンジジュースやコーヒー、さまざまなペーストリーやパン、シリアル、フルーツのほか、ソーセージやベーコン、オムレツなどの暖かい朝食メニューも充実していますので、毎日違うメニューにして楽しむことができました。
追加料金なしで部屋で朝食を食べることができるというのは、私たちのような小さな子連れには本当に助かりますし、またテーマナイトなどで夜遅くまでパーティーを楽しんだ後、少しくらいお酒が残っていても、バスローブのままベッドで朝ごはんをいただけるというのは嬉しいですよね。
バー
娘を連れて毎日船内を散歩していて、バーのスタッフの方々ともたくさんお話しする機会がありました。彼らによると、日本発着の航路では、世界の他の場所と比べるとアルコールを飲む人が少ないそうです(笑)。しかも、夜遅くまで飲む人も少なく、早い時間にみんな部屋に帰ってしまうとのことでした。
確かに、イギリス人はかなり夜遅くまでバーに溜まって飲んでいることが多いですが、日本人はそのあたり分別があるようです。特にキュナードの客船に乗るような客層だと、余計に遅くまで飲み歩くようなことはないのかもしれませんね。また、食事はクルーズの料金に含まれていても、バーの料金は別途となるのもその理由の一つかもしれません。
また、船内にある数あるバーでは、娘と同じくらいの年頃の子供たちを東南アジアなどの家に残して船に乗って働いているパパたちとも出会いました。娘を見て、懐かしく思ったようで、彼らのかわいいお子さんたちの写真も見せていただきました。
豪華客船クイーンエリザベスの施設
ガーデンラウンジ
さまざまな施設が併設されているクイーンエリザベスの船内ですが、乗船して一番最初に訪れることになったのがガーデンラウンジでした。というのも乗船時間にまだお部屋の準備が整っていないということで、そこで待つように言われたからです。
その後も何度もガーデンラウンジは訪れましたが、特に晴れた日の夜はガラスの天井越しに月を見ることができたのが印象的でした。娘も月を見たいというので、毎晩お月様が出ているか探しに行きました。昼間の時間も特に少し寒い日などは、ガラス越しに景色を眺めながら、屋内でドリンクを楽し無ことができるのが嬉しいですね。
図書館
クイーンエリザベスの船内で最も静かに心を落ち着けられる場所は図書館かもしれません。2フロアにまたがる図書館は、とても厳かな雰囲気でありながら、窓からは明るい日が差し、座って本を読めるような席もあります。
仕事をいただいて乗っていたのと、子供の世話に追われて、本を読むような余裕はなかったのですが、ちょっと心を落ち着けたいとき、集中して仕事に取り組みたい仕事があるようなとき、図書館に行っていました。
ギャラリー
クイーンエリザベスの中にあるギャラリーでは、絵画を閲覧して楽しむことができるだけでなく、作品を購入することもできます。このギャラリーはロンドンの街中にもあるClarendonのという有名な画廊です。
ギャラリーのスタッフの方々はとてもフレンドリーで親切で、娘が毎日動物の絵画を見に行くのを日課にしていることを知ると、見えやすいところに動物をテーマにした作品を飾るなどして毎日娘を楽しませてくれました。ふわふわの毛が描かれたトラの作品は特にお気に入りで、毎日娘は見入っておりました。
その他にも、ロンドンの家を離れた旅の中で、ロンドンバスやロンドンの街並みをテーマとした作品も娘の心を癒してくれたようです。作品の展示は数日ごとに変わるので、毎日訪れても飽きることがありませんでした。
カジノ
大きな時計が象徴的な階段を降りると、そこにはカジノがあります。夜の時間帯でもそこまで騒がしい場所ではなく、落ち着いてカジノを楽しめる雰囲気の場所でした。
シアター
船の先頭付近には、船の中とは思えないような大規模なシアターがあり、毎晩華やかなショーが繰り広げられていました。私が担当させていただいたゲスト講義もこのシアターで行わせていただきましたが、レクチャールームにしては勿体無いような素晴らしい設備でした。
シアターで行わる催し物は、船内専用のテレビ放送でも流されるため、シアターまで足を伸ばさなくても自分の部屋にいたまま楽しむこともできます。また再放送などもあるため、昼間の退屈した時間帯に見ることもできるようになっています。
ショップ
クイーンエリザベスの船上では、イギリスもののウィスキーやリキュール、ジュエリー、セカンドハンドのシャネルのバッグなど、さまざまなラグジュアリグッズが売られています。ただ、免税のアルコールのボトルなどは、船を降りる時まで受け取ることができないなどのルールがあるので注意が必要です。
その他にも、SmythsonやLibertyなどイギリスでお馴染みのブランドの品も船上で購入することができます。もちろんハロッズやセルフリッジーズに行くのとは違いますが、船内でありながら豊富な品揃えの店内でレザー小物や衣服などを見て歩くだけでも楽しかったです。
さらに、クイーンエリザベスのオリジナルグッズをお土産として購入することもできます。ロゴの入ったTシャツやグラスをはじめ、非常に幅広いグッズが置かれていたので、一度はチェックしたいですね。また船内のショップでは、おむつや鎮痛剤、酔い止めなども売られているので、何か足りないものがある時は聞いてみると良いと思います。
ダンスフロア
毎晩、生バンドが演奏を繰り広げるダンスフロアには、光の模様が織りなされ、夕方陽が傾く頃から体を慣らし始める社交ダンスの愛好家たちが集まっていました。
音楽の演奏だけでなく、キラキラ光る美しいドレスを身につけた金髪の女性が歌を歌っていて、娘は毎晩その女性に釘付け。バルコニーの柵の間に顔を押し付けて見つめる娘に気づいてくれたそのシンガーが時折手を振ってくるのが嬉しくて仕方なかったようです。
レッドライオンパブ
イギリス船籍の船ということで、欠かせないのがパブです。イギリスの街を船に封じ込めたような環境ですから、パブももちろんあり、イギリスの定番メニューの食事やドリンクが提供されていました。
また、パブに飾られていたキュナードの3隻の船をテーマにしたジンのセットをお土産に購入しました。こちらの品はアルコール製品ですが、最終的な下船を待たずに持ち帰ることができるので、途中立ち寄る港で友人に会う際の手土産にすることもできました。
保育所
子供を連れて乗船する人にとって嬉しいのは、船内に保育所があることです。英語の絵本をはじめ、さまざまな国の絵本があるのもいいですね。保育所は結構広くて、さまざまなおもちゃや工作などのアクティビティも充実しているので、子供たちも飽きることはありません。
ただスタッフは基本イギリス人なので、日本語は話せません。また、2歳未満の子供はスペースを使うことはできても、子供だけを置いて出ることができないため、筆者は保育所というよりは遊び場として利用していました。
医務室
船内には医務室もあり、万が一具合が悪くなった時も安心です。案の定、娘が写真撮影中に階段から落ちるという事故まで経験してしまい、医務室にもお世話になりました。こちらも看護師や医師が常駐しており、すぐに診ていただけましたが英語での対応です。診察料金は100ドルちょっとでした。
豪華客船クイーンエリザベスの客室
プリンセスグリルスイートの部屋
子連れで部屋があっという間にぐしゃぐしゃになってしまったので、写真を撮るのも忘れてしまったのですが、プリンセスグリルースイートということで、バスルーム、ベッドのあるエリアからバーカウンターを挟んで反対側にソファが置かれたくつろぎスペースがあり、専用のバルコニーもついていました。ベージュを基調とした非常に落ち着いた色合いのお部屋です。
プリンセスグリルスイートの場所
また、私たちの宿泊させていただいたお部屋はデッキ4のミッドシップに位置するため、船全体の中でも揺れが少ない場所であったと思います。ただ、プリンセス・グリル・スイートと言っても、やはり客船の中のの部屋ですから、5つ星ホテルのスイートのようにものすごく広いというわけではありません。
以下のリンクにグリルスイートの写真がたくさん載っているので参考にしてみてください。
ウェルカムドリンク
乗船後早速部屋に入ってまず見つけたのが、冷えたシャンパンとチョコレートでした。アルコール別料金の船内でスパークリングのウェルカムがあるのは嬉しいサービスですね。また、筆者はコーヒーが大好きなので、部屋に専用のイリーのコーヒーマシンが設置されていたのはとてもありがたかったです。時差ぼけで到着したので、シャンパンよりもまずコーヒーをいただきました(笑)。
アメニティ
その他のアメニティとしては、フカフカのバスローブとスリッパ、クルーズカードを入れて使うことのできるカードケースなどが置かれていました。ヘアドライヤーや石鹸、シャンプー、ボディソープ、歯ブラシなども揃っていました。
その他
部屋の鍵の受け取り方
コンシェルジュはついていても、ホテルと違ってチェックインするレセプションが船内にあるわけではありません。乗船前に港で書類などのチェックはありましたが、乗船したら部屋の鍵は、指定された部屋番号の部屋に行き、レターをかけるラックに置かれている部屋の鍵を受け取ることになります。その他にも、船内の連絡は部屋のドアのところのレターラックに手紙が届く形で行われることになります。
チップ
クイーンエリザベスをはじめとしたキュナードの船はイギリス船籍ということで、サービスのシステムはイギリスのスタンダードということになります。でもチップの風習のない日本人の客層を対象にしているということをキュナード側がよく心得ているようで、日本発着航路のチップは全て料金に込みと書いてあったのを見て感心しました。よってポーターサービスやベッドメイキング、ルームサービスなどに対してその都度チップを渡す必要はないようです。
まとめ
世界最高峰の豪華客船ということで、気取ったイギリスという雰囲気なのかと思えば、フレンドリーなクルーたちのおもてなしを感じて、とても楽しい船旅をすることができました。もちろん、仕事もなく、子連れでもなければ、もっとお酒やシアターのショーも楽しめたのだと思いますが、娘を連れていたからこそ感じられたホスピタリティもあったと思います。
クイーンエリザベスでのクルーズは日本の周りを旅しながら、イギリスを楽しむことができる非常に面白い機会だと思います。イギリスに興味のある方はぜひ、一度体験してみてくださいね。