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光電効果とは何か

    アインシュタインの光電効果

    光電効果という言葉を聞いたことはあるでしょうか?英語では「Photoelectric Effect」と呼ばれ、その理論化はアインシュタインの偉大な業績の一つでもあります。実際、アインシュタインが1921年に受賞したノーベル賞は、光電効果の法則の発見に対して与えられたものです。

    それにも関わらず、光電効果は相対性理論に比べると、一般の人にはあまり知られていない言葉かもしれません。この記事では、アインシュタインの功績である光電効果について、できるだけわかりやすく説明してみたいと思います。

    光電効果とは何か

    光電効果の重要性

    光電効果がなぜ重要な発見なのかというと、それは「光が粒子のように振る舞う」ということを証明するものだからです。

    17世紀の科学者であるニュートンは光を粒子だと考えていましたが、その後電磁気学が完成されたアインシュタインの時代には、「光は波のように振る舞う」という考え方が一般的でした。そこに、光が粒子のように振る舞うことを証明する現象が登場したのです。そして、それはその後量子力学へと発展していく考えでした。

    実験の概要

    では、具体的に光電効果とはどういう効果なのでしょうか?簡単に言うと、金属の表面に光を当てると、金属の表面にある電子が光のエネルギーを吸収して飛び出す、というものです。これは、金属の表面にある電子が十分なエネルギーを吸収すると、電子を金属に繋ぎ止めている結合が切れて、電子が放出されるために起こります。放出された電子は光電子と呼ばれます。

    ここで「光を当てる」と言いましたが、これは必ずしも可視光線出なくても構いません。電磁波は周波数によって、赤外線、紫外線、X線などの様々な名前で呼ばれますが、可視光線以外の周波数でも光電効果は起こります。

    実験からわかった3つのこと

    実験の結果いくつかのことがわかってきました。重要なのは以下の3点です。

    ある値以上の周波数が必要

    照射する光の周波数がある値よりも低いと、光電子は放出されません。最低必要とされる周波数は、光を当てる金属の種類によって異なります。

    光電子の運動エネルギーは周波数に比例する

    光電子は様々な運動エネルギーを持って放出されますが、照射する光の周波数が大きくなると、光電子の運動エネルギーもそれに伴って大きくなります。その一方で、同じ周波数の光を強く当てても運動エネルギーは変化しません。つまり、放出される光電子の運動エネルギーは光の周波数に比例するが、光の強度には依存しないということになります。

    放出される光電子の個数は光の強度に比例する

    1秒間に放出される光電子の個数は、光の強度に比例して増加します。1個の光電子がもつ運動エネルギーは周波数にのみ依存し、光の強度に依存しないと言いましたが、同じ周波数の光の強度をあげたときには、より多くの光電子が放出されることになります。

    光は粒子である

    波の理論で説明できない光電効果

    もし、「光が波である」という理論が正しければ、ある周波数の光を当て続ければ、その強度が増すにつれてより大きなエネルギーが電子に伝わるということになります。よって光電子が飛び出すのに、ある値以上の周波数が必要ということにはならないはずです。

    また、周波数が低くても、光を当て続けて強度が大きくなれば、電子に伝わるエネルギーが大きくなり、飛び出す光電子がより大きな運動エネルギーを持つことも可能なはずです。

    さらに、光が波であれば、そのエネルギーは金属の表面の広い範囲に伝わり、そこにある複数の電子が光の波からのエネルギーを吸収するはずです。でも実験結果は、そのようにはなっていないのです!

    アインシュタインの光子モデル

    そこでアインシュタインが考えたのは、電磁波(電磁波が伝えるエネルギー)は小包のような個別のかたまりとして存在しているという理論です。この個別のかたまりは「光子(Photon)」と呼ばれます。

    光子が運ぶエネルギー

    光子が運ぶエネルギーEは、以下の式で表されます。

    $$E=hf$$

    fは周波数で、hはプランク定数と呼ばれる定数です。光子のエネルギーはプランク定数を定数として周波数に比例するということが表されていますね。

    また、波の速度は定義より$v=fλ$、つまり周波数と波長の積で表すことができました。電磁波の速度は周波数に関係なく一定のcですから$c=fλ$となり、上記のfに代入すると以下の式が成り立ちます。

    $$E=\frac{hc}{λ}$$

    光電効果の実験

    光電効果の実験についてもう少し詳しく見てみましょう。金属に当てる光と、金属から飛び出す光電子の振る舞いについて測定するためには、以下の図のような装置が使われます。回路の中に金属板を取り付け、そこに光を当てると飛び出した電子によって電流ができます。電池を使って反対向きに電流を流し、金属から放出された電子が反対側の金属板にたどり着かないところまで電圧をあげ、それを電流計で測定することで、電子の運動エネルギーを測定することができます。

    限界周波数

    「光が粒子である」と考える光子モデルだと、光電子が放出されるためにはある値以上の周波数を必要とするという実験結果についても説明を与えることができます。

    光子モデルでは、光電効果が起こるとき金属の表面にある1つの電子は、1つの光子からエネルギーを受け取ると考えます。電子1個に対して光子1個という一対一の関係でエネルギーがやりとりされるわけです。

    金属から光電子が放出されるためには、電子を繋ぎ止めている結合を断ち切るに十分なエネルギーが1つの光子から与えられる必要があります。十分なエネルギーが与えられなかった場合、金属は熱せられるだけで光電子は放出されません。

    光電子が放出されるのに必要なエネルギー$φ$は$hf≧φ$となるとき光電効果が起こります。この時の周波数を限界周波数(Threshold Frequency)と呼びます。

    $$f=\frac{φ}{h}$$

    光電子の最大運動エネルギー

    光子が運ぶエネルギーが$E=hf$で、電子を金属から断ち切るのに必要なエネルギーが$φ$ということは、放出される光電子の最大運動エネルギー$E_{k(max)}$は、以下の式で表すことができます。ちなみに、最大運動エネルギーと書いたのは、電子が金属のより深いところにあったりすると、放出される際にエネルギーを失うことがあるためです。

    $$E_{k(max)}=hf-φ$$

    また、放出された光電子の運動エネルギーは、その質量mと速度から以下のように表すこともできます。

    $$E_{k(max)}=\frac{1}{2}mv_{max}^2$$

    阻止電圧

    上記の実験で、放出された光電子が反対側の金属板までたどり着けないようにする電圧を「阻止電圧(Stopping Potential)」と呼びます。一般に電圧VはエネルギーEを電荷Qで割ったものなので、以下の式で表すことができます。

    $$V=\frac{E}{Q}$$

    すると阻止電圧$V_s$は、金属から放出された電子の動きを阻止する電圧ですから、電子の運動エネルギー$E_k(max)$を電荷e(電子一つの電荷)で割ったものとなって、以下のように表すことができます。

    $$V_s=\frac{E_k(max)}{e}$$

    よって光電子の運動エネルギーは阻止電圧と電荷を使って以下のように表すことができます。

    $$E_{k(max)}=eV_s$$

    まとめ

    光電効果は「金属に光を当てると電子が飛び出す」という非常にシンプルな現象ですが、光の性質についての非常に重要な洞察を与えるものだったと言えます。つまり、光の粒子としての特性を証明するものだったわけです。

    光子と電子が、2つのテニスボールがぶつかり合うように一対一の関係でエネルギーをやりとりするというイメージがポイントになると思います。波と考えられていた光(電磁波)を粒子と捉えて理論を発展させたアインシュタインはやっぱり天才ですね!