物理を勉強するなら、英語を使って勉強するとわかりやすくなります。なぜかというと物理学で使われている記号にはその記号を意味する英語単語の頭文字をとったものも多く、また英語の論理性と物理学の論理性が対象となる物理運動を記述するのにうまく合致するからです。しかも日本語では難しく聞こえる物理用語も、英語で書くとなんのことはないものであることがわかります。例えば、
Motion along a straight line:直線運動
日本語で「直線運動」というと専門用語になってちょっと難しそうに聞こえますが、英語で書くと、「直線にそった運動」ともう少し柔らかく説明的な表現になります。Straight-line motionというときもあります。
直線運動:平均速度と瞬間速度
直線運動を記述する上で必要な英語と記号
まず直線運動を表すために必要な概念に対応する言葉と、それを物理学的に表す際に使う記号について見ていきましょう。今回使うのは以下です。
英語 | 日本語 | 記号 |
---|---|---|
time | 時間 | $t$ |
position | 位置 | $x$ |
velocity | 速度 | $v$ |
average velocity | 平均速度 | $v_{av}$ |
instantaneous velocity | 瞬間速度 | $v_x$ |
interval | 時間の変化 | $𝛥t$ |
displacement | 位置の変化(変位) | $𝛥x$ |
coordinate | 座標 | |
axis | 座標軸 | |
limit | 極限 | $\displaystyle\lim$ |
derivative | 導関数 | $\frac{dx}{dt}$ |
座標の軸が$x$軸だけではなく、$y$軸や$z$軸が入る場合この限りではないですが、直線運動では$x$という1つの方向についての動きしか考えませんので、ここでは$x$を使った表記だけで十分です。
時間と位置の変化
それでは、ある物体が座標の$x$軸に沿って直線的に動くことについて考えます。ある物体がある時刻$t_1$に座標の$x_1$位置にあったとします。少し時間が経過した後のある時刻$t_2$には座標の$x_2$の位置に移動していました。まず、$t_1$から$t_2$までの時間の変化は次のように表すことができます。
$$𝛥t=t_2-t_1$$
$𝛥$は変化量、つまりものがどれくらい変化したかを示す記号です。ここでは時間$t$を表すものとして$𝛥t$と書かれています。続いて、$x$座標に沿った$x_1$から$x_2$への変位は次のように表すことができます。
$$𝛥x=x_2-x_1$$
平均速度を記述する式
速度というのは物体がある一定の時間にものが位置を変える割合を示しますから、以下の式で表すことができます。
$$v=\frac{x}{t}$$
ある物体がある時間の間にある距離を移動しているとき、移動中に速度が上がったり下がったりしているかのうせいがあります。でもここで求めているのはこの運動が起こっている間の物体の平均的な速度ですので、もう少し厳密に平均の速度であることが明らかになるようにして、以下のように記述します。
$$v_{av-x}=\frac{x_2-x_1}{t_2-t_1}=\frac{𝛥x}{𝛥t}$$
瞬間速度を記述する式
ある運動が起こっている間の平均的な速度の出し方はわかりました。でもある瞬間の速度が知りたい場合はどうすればいいでしょう?この運動が起こる時間を限りなく小さくしてくことを考えればいいですね。そのためにはまず時間の変化$𝛥t$を限りなく0に近づけるという操作が必要です。
$$\displaystyle\lim_{𝛥t\to 0}$$
極限を使ってこのように書きます。平均速度の式の時間の変化量$𝛥t$を限りなく0に近づけると、ある瞬間における速度、つまり瞬間速度を表すことができます。
$$v_x=\displaystyle\lim_{𝛥t\to 0}\frac{𝛥x}{𝛥t}=\frac{dx}{dt}$$
このように、瞬間速度は平均速度の極限です。時間についての位置の変化の瞬間的な割合、変化率ということになります。距離を時間で微分すると瞬間速度になるわけです。瞬間速度は時間に関する距離の導関数ということもできます。
高校の数学では導関数を$f'(t)$と記述していました。ここでは別の表記法を使っていますが同じことを意味しています。
$$f'(t)=\frac{dx}{dt}$$
高校数学の微分で習ったように書き換えてみると、$t$の微小変化量を$h$、つまり$𝛥t=h$、$x$の微小変化量を$𝑓(t+ℎ)−𝑓(t)$、つまり$𝛥x=𝑓(t+ℎ)−𝑓(t) $として、$h$を0に限りなく近づけるというのと同じことになります。
例題
ある物体が時刻$t_o$に観察者から見て$x$軸方向20mの距離の位置にあり、$x$軸方向に向かって動いています。最初の2秒間の物体の位置$x$は次のように表されるとします。
$$x=20m+(5.0m/s^2)t^2$$
1)$t_1=1.0s$と$t_2=2.0s$それぞれの物体の変位を求めなさい。
上記の式に、$t_1=1.0s$と$t_2=2.0s$の値をそれぞれ代入すれば簡単です。
$$x_1=20m+(5.0m/s^2){1.0s}^2$$
$$=20m+5.0m=25m$$
$$x_2=20m+(5.0m/s^2){2.0s}^2$$
$$=20m+20.0m=40m$$
となります。
2)この間の平均速度を求めなさい。
問題1)の結果から距離がわかるので時間で割ればいいだけです。
$$v_{av-x}=\frac{x_2-x_1}{t_2-t_1}=\frac{40m-25m}{2.0s-1.0s}$$
$$=\frac{15m}{1.0s}=15m/s$$
3)$𝛥t=0.1s$として$t_1=1.0s$における瞬間速度を求めなさい。
$𝛥t=0.1$から、$t_2=1.1s$とすることができるので、
$$x_2=20m+(5.0m/s^2){1.1s}^2$$
$$=20m+6.05m=26.05m$$
$$v_x=(26.05m-25m)/0.1s$$
$$=1.05m/0.1s=10.5m/s$$
となります。
4)この物体の瞬間速度を時間$t$の関数として記述しなさい。
$x$を$t$で微分すれば求められます。定数の微分は0 、$t^n$の微分は$nt^{n-1}$でしたので、
$$v_x=\frac{dx}{dt}=\frac{d}{dt}20m+\frac{d}{dt}(5.0m/s^2)t^2$$
$$=0+(2\times5.0m/s^2)t=(10m/s^2)t$$
となります。
直線運動:平均加速度と瞬間加速度
英語と記号
英語 | 日本語 | 記号 |
---|---|---|
time | 時間 | $t$ |
position | 位置 | $x$ |
average velocity | 平均速度 | $v_{av}$ |
instantaneous velocity | 瞬間速度 | $v_x$ |
acceleration | 加速度 | $a$ |
average acceleration | 平均加速度 | $a_{av}$ |
instantaneous acceleration | 瞬間加速度 | $a_x$ |
interval | 時間の変化 | $𝛥t$ |
change of velocity | 速度の変化 | $𝛥v_x$ |
limit | 極限 | $\displaystyle\lim$ |
derivative | 導関数 | $\frac{dv}{dt}$ |
時間と速度の変化
前回と同様に、ある物体が座標の$x$軸に沿って直線的に動くことについて考えます。ある物体がある時刻$t_1$に座標の$x_1$位置にあったとします。少し時間が経過した後のある時刻$t_2$には座標の$x_2$の位置に移動していました。このとき、$t_1$から$t_2$までの時間の変化は次のように表すことができましたね。
$$𝛥t=t_2-t_1$$
続いて、速度の変化を見てみます。$xv_{1x}$から$v_{2x}$への速度の変化は次のように表すことができます。
$$𝛥v_x=v_{2x}-v_{1x}$$
$x$が入っていて読みにくかったら、以下でも大丈夫です。
$$𝛥v=v_2-v_1$$
平均加速度を記述する式
加速度というのは、ある時間における速度の変化率ですから、以下のように表されます。
$$a=\frac{v}{t}$$
よって時刻$t_1$から時刻$t_2$の間の平均加速度は次の式で記述することができます。
$$a_{av-x}=\frac{v_{2x}-v_{1x}}{t_2-t_1}=\frac{𝛥v_x}{𝛥t}$$
こちらも$x$がたくさん入っていて読みにくかったら、以下でも大丈夫です。
$$a_{av}=\frac{v_{2}-v_{1}}{t_2-t_1}=\frac{𝛥v}{𝛥t}$$
瞬間加速度を記述する式
ある瞬間の加速度が知りたい場合はどうすればいいでしょう?前回の記事で瞬間速度を求めたときと同様に、この運動が起こる時間を限りなく小さくしていけばいいですよね。そのためにはまず時間の変化$𝛥t$を限りなく0に近づけるという操作が必要でした。これは極限を使って以下のように書くことができます。
$$a_x=\displaystyle\lim_{𝛥t\to 0}\frac{𝛥v_x}{𝛥t}=\frac{dv_x}{dt}$$
これがある瞬間における瞬間加速度になります。こちらも$x$がたくさん入っていて読みにくかったら、以下でも大丈夫です。
$$a=\displaystyle\lim_{𝛥t\to 0}\frac{𝛥v}{𝛥t}=\frac{dv}{dt}$$
例題
$x$軸方向に動く物体があり、ある時刻$t$における速度$v_x$が以下の式で与えられるとします。
$$v_x=60m/s+(0.50m/s^3)t^2$$
1)$t_1=1.0s$から$t_2=3.0s$の間の$x$軸方向の速度の変化を求めなさい。
$$𝛥v_x=v_{2x}-v_{1x}$$
$$=4.5m/s-0.50m/s=4.0s/m$$
2)この時間の$x$軸方向の平均加速度を求めなさい。
$$a_{av-x}=\frac{v_{2x}-v_{1x}}{t_2-t_1}$$
$$=\frac{4.0m/s}{2.0s}=2.0m/s^2$$
3)$𝛥t=0.1$として、$t_1=1.0s$における$x$軸方向の瞬間加速度を求めなさい。
$𝛥t=0.1$から、$t2=1.1s$とすることができるので、
$$v_{2x}=60m/s+(0.50m/s^3)1.21s^2$$
$$=60.605m/s$$
4)この物体の瞬間加速度を時間$t$の関数として記述しなさい。
$v_x$を$t$で微分すれば求められます。
$$v_x=\frac{dv_x}{dt}=(1.0m/s^3)t$$
等速加速運動と自由落下
今度は、一定の加速度で加速する物体の運動について考えます。高いところから地面に向かって物体を落としたときの運動も、この等速加速運動にあたります。紀元前4年、アリストテレス(Aristotle)は軽い物体より重い物体のほうが速く落下すると考えました。それから19世紀が経過した頃、ガリレオ(Galileo)は物体はその重さに関係なく、一定の加速度で落下すると考えました。
Motion with Constant Acceleration:等速加速運動、つまり加速度が一定の運動です。
Free Fall:自由落下、つまり空気の摩擦や抵抗などの影響を受けずに、重力の働きだけによる落下です。
英語と記号
time | 時間 | $t$ |
position at t | 任意のtにおける位置 | $x$ |
position at t=0 | t=0における位置 | $x_0$ |
instantaneous velocity at t | 任意のtにおける瞬間速度 | $v_x$ |
instantaneous velocity at t=0 | t=0における瞬間速度 | $v_{0x}$ |
average velocity | 平均速度 | $v_{av-x}$ |
instantaneous acceleration at t | 任意のtにおける瞬間加速度 | $a_x$ |
instantaneous acceleration at t=0 | t=0における瞬間加速度 | $a_{0x}$ |
average acceleration | 平均加速度 | $a_{av-x}$ |
the acceleration due to gravity | 重力加速度 | $g$ |
右下に小さな$x$が付いているのは、座標の$x$軸方向の等速加速度について考えているからです。
等速加速運動についての重要な方程式は、任意の時間tにおける速度$v_x$と、任意の時間tにおける位置$x$を表す以下の2つの式です。
$$v_x=v_{0x}+a_xt$$
$$x=x_0+v_{0x}t+\frac{1}{2}a_xt^2$$
任意の時間tにおける速度
まず、$v_x$を表す式がどこから出てきたかですが、これは任意の時間tにおける加速度$a_x$を表してみるとわかります。加速度が一定なので、平均加速度と瞬間加速度は同じになるのでシンプルに導くことができます。
$$a_{av-x}=a_x=\frac{v_x-v_{ox}}{t-0}$$
$$v_x=v_{0x}+a_xt$$
任意の時間tにおける位置
今度は$x$を表す式の導出です。
$$v_{av-x}=\frac{v_{ox}+v_x}{2}$$
ここに$v_x=v_{0x}+a_xt$を代入すると、
$$v_{av-x}=v_{0x}+\frac{1}{2}a_xt$$
となります。また、平均速度は次のように表すこともできます。
$$v_{av-x}=\frac{x-x_0}{t}$$
2つの式が同等ということから、
$$\frac{x-x_0}{t}=v_{0x}+\frac{1}{2}a_xt$$
が成り立ち、
$$x=x_0+v_{0x}t+\frac{1}{2}a_xt^2$$
を導くことができます。
自由落下
上記の通り自由落下も等速加速運動の一つですが、自由落下の加速度は「重力加速度」と呼ばれ、$g$で表されます。
$$a=g=9.8m/s^2$$
雑記
この記事を書くにあたって、ワードプレスで数式を表記する方法を学びました。Simple MathJaxというプラグインを入れると、普通のブロックに「$」や「$$」を入れながら数式を書いていくだけで、綺麗に表示されるということがわかりました。ちょっと感動しました(笑)