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バイリンガルの子供は言葉が遅い?【言葉を伸ばすためにやったこと】

    バイリンガルの子供は言葉が遅いとよく言われますよね。筆者はイギリスで2歳の女の子を育てる教育テクノロジー博士課程学生ママです。実際娘が0歳の頃には、保健師さんや保育士さんなどプロの方からも、「バイリンガルの子供は言葉が遅いので焦らないように」と言われていました。

    ところが、娘は生後300日を待たずに意味ある言葉を発し始め、1歳になる頃にはすでに2語文を話し、2歳2ヶ月の現在はほぼ満足な会話が成り立ち、日本語ができないパパの通訳もこなすまでになっています。

    初めての育児ということで、睡眠や食事に関しては人並みに悩んできたと思いますが、バイリンガル環境で育っているにもかかわらず娘の言葉の発達は、遅いどころか0歳から口だけは達者。よってバイリンガルの子供は言葉が遅いとは思いません。

    もちろん個人差はあると思いますが、最近公園などでも同じくらいの子供の親たちにどうやっているのかと聞かれることがあったので、この記事ではバイリンガルの子育ての中でも言葉を発達させるようにした努力と工夫について書いてみたいと思います。

    バイリンガルの子供の言葉が遅い?

    バイリンガルでも言葉は遅くならない

    娘が意味のある言葉を初めて話したのは、生後299日の時。7ヶ月から週3半日現地の保育園に通う生活の中でも、日本語の語彙を先に伸ばし、1歳になったばかりの頃にはすでに「ママ抱っこ!」などの2語文を話していました。

    2歳を待たずして会話が成り立つくらいの語彙を身につけ、時には日本語が話せないパパのために通訳をこなすほど。2歳2ヶ月となった今は、日本語でも英語でもお人形遊びの会話を一人で成り立たせていて感心します。

    イギリスでは2歳3ヶ月に発達検診があるのですが、そのアンケートに「3語以文を話しますか?」という項目があります。話すようであれば例を書くようにとなっているのですが、うちの娘の発する長い文は「ちゃんとご飯食べたから、デザート食べていい。」とか「ちゃんと寝たら、サンタがプレゼント持ってくる」みたいな文なので、3語どころではなく、英単語にしたら条件節付きの10語文ですが、母として痛いとこをついてくる文で困ります。

    ですのであくまで個人的な体験談ですが、娘を見ている限り、バイリンガルの子供は言葉が遅いとは思いません。

    親の語りかけの影響

    子供の言語発達には個人差とともに、親の語りかけの影響があることは広く知られています。労働者階級と中産階級の家庭の子供の語彙の差を比較した研究では、中産階級の家庭出身の子供の方が語彙が多く、中産階級の親の方が1分あたりに子供に語りかける言葉の数が多かったという報告がなされています。

    先日ロンドンでバスに乗った際に、娘より少し大きい3歳前くらいの女の子が若いお母さんと一緒にバスに乗ってきました。子供は奇声を発して母親の気を引こうとしているのですが、お母さんはヘッドフォンをしていて、お菓子を与えるばかりで子供に話しかけもしていませんでした。それではやはり、子供も言葉でお母さんに話しかける気にはならないですよね。

    バイリンガル教育は何が大変か?

    バイリンガル育児をするイギリス現地のママ友たちから、2ヶ国語を教える大変さも色々と聞かされてきました。英語圏で育った子供は、意識して教え続けない限り、第二言語を話すのが面倒くさくなって話さなくなるというのです。

    自分自身も親の転勤で住んでいた広島から、9歳で関西に引っ越しをした後、あっという間に家族の中で自分だけ関西弁になってしまったので、親よりも周りの言語の影響が大きいことは熟知しているつもりです。それゆえに、筆者も娘のインプットアウトプットをモニタリングして、二つの言語のバランスを取る努力をしています。

    日本語を話す相手が自分だけという責任

    娘が生まれた時、まっさらのハードドライブを受け取ったという感覚がありました。もちろん生まれ持ったハードウェアの良し悪しはあるにしても、そこにどんなプログラムを書き入れていくのか、親はその責任を担っていると。

    日本語を話す相手がほぼ母親だけという環境で育つということは、筆者が話した言葉、筆者が読み聞かせた本、筆者が選んで見せた動画コンテンツが子供の語彙の全てということです。それには大きなプレッシャーと責任を感じました。

    他の大人と話しているのをあまり聞かれない分、大人の汚い言葉を聞かれないという利点もありますが、子供に話してほしい言葉、子供の思考の糧となるような言葉を、できるだけ選んで話しています。

    バイリンガルの子供の言葉を発達させる工夫

    以下では、子供の言葉の発達を促すために筆者が意識していることなどについていくつかお話ししたいと思います。

    常に話しかける

    これは意識的にやったというよりは、娘の性格上やらざるを得なかったという側面もあるのですが、生まれてからずっと、とにかく筆者は娘に常に話しかけていました。常に月齢のミニマム水準以下の睡眠時間しか眠らず、退屈するとぐずるというベイビーだったので、ママは常に話かけるしかなかったわけです。と言いつつも、ペットすら飼ったことのなかった筆者はベストフレンドができたような気持ちで、可愛い話し相手ができたことは嬉しくもありました。

    また、何だか大人びたベイビーだったため、月齢が低くて反応がまだ返ってこないような時期から、勝手に思うことを話しかけていました。「今日はお空が青くていいお天気だよ」というような真っ当なものもあれば、「ねえ、今日の晩ご飯何にしようか?」という身勝手な相談から、「今日指導教官に面倒な注文出されたよ」という愚痴的なものもありましたが、娘は好奇の目でいつも私の話を聞いてくれました。

    外にお散歩に出た時はわりかしネタも拾いやすく、またレポーターのようにしゃべり倒していました。「見てみて、可愛いわんわんが走ってるよ!」、「今、赤いブーブーが通ったね」、「夕焼けがとっても綺麗だよ!」。とにかく目に入ったものを全て言語化する作業。おかげで、筆者自身も長い海外暮らしで訛っていた日本語が上手くなったと思います(笑)。

    喉が痛くなって声が枯れるほどしゃべり倒していた時期もありましたが、最近は娘の方がお喋りなので、自分で喋り続けなくてもよくなって楽になりました。でも女友達のつもりで娘に話かけていたからか、娘も女友達みたいなノリで「マミー、ねえねえ、見てみて」と話しかけてくれるようになって、嬉しいばかりです。

    繰り返す

    何でもない日常の風景を、レポーターのように何時間も言葉で表現し続けることはなかなか大変です。新しいネタが見つからずに次の言葉に詰まってしまうこともあります。そんな時は同じフレーズを何回も繰り返すことにしました。

    レポーターだったら、同じ文を何回も繰り返すのは許されないかもしれませんが、まだ言葉を学んでいる子供に聞かせているわけですから、繰り返したって構いません。外国語の習得などでも反復学習に効果があることが開く知られていますよね。

    2、3回の繰り返しをアリにすると、結構長く喋り続けられませんか?それに、情報性や論理性を気にする必要もありません。とにかく見たもの、聞こえたもの、感じたもの、それをアウトプットに出して子供に伝える。子供はちゃんと聞いています。何ヶ月も経ってから、ずっと前にママが発した言葉を覚えていてくれたりすることだってあります。

    また、子供が発した音を繰り返すのも効果的です。クーイングと呼ばれる赤ちゃんが話す喃語を真似して反応してあげる、時にはイントネーションを変えて会話のように答えてみる。そうやって言葉が出ない月齢の低い時期から、筆者は娘と会話したような感覚が大好きでした。

    歌にする

    娘は退屈するとぐずるベイビーだったので、喋りかける他、歌もたくさん歌っていました。これは少し言葉がで初めてからの工夫ですが、子供のよく知っている歌に伝えたいメッセージを載せて替え歌にして歌うのです。

    例えば、娘はバスのタイヤの歌が大好きなのですが、このメロディに乗せて「お片づけをしよう、綺麗にしよう」「晩ご飯を食べよう、魚も、野菜も」などと言いたいことを歌います。それをあまりに頻繁にやっていたからか、18ヶ月くらいからは娘も歌で答えてくれるようになって、今も歌で会話をするようなこともあります。

    勝手に子守唄も作りました。「This baby needs to sleep. This baby needs to sleep. Otherwise you are grizzle chop, otherwise you are grizzle chop!」なんて適当に歌っていたら、いつの間にか娘は本当にある歌だと思ってしまったらしく、「This babyのうた歌って!」などとリクエストも来るようになりました。

    言いやすい方の言語を選ばせる

    ものによって、英語と日本語どちらかの方が言いやすい言葉というのがありますよね。例えば、「車」というより「カー」の方が音節も少なく言いやすい、「くま」というより「ベア」の方が子音の発音もしやすいです。娘は短い言葉をよく2回繰り返して使っていました。つまり車は「カーカー」、くまは「ベアベア」です。「美味しい」も「ヤム!」の方が言いやすく、「ヤムヤム」と言っていました。

    逆に英語よりも日本語の方がいやすいものもあります。「Found it!」というよりは「あった!」の方が言いやすいし、「Carry me!」というよりは「だっこ」と言った方が早いです。動物の鳴き声はもっぱら日本語の方を先に習得したようで、「メーメー」「ブーブー」などとして動物の名前を学びました。

    バイリンガルの子供の言語発達に関する有利な点は、言いやすい方を選んで使うことができるという点だと感じます。娘はどちらも聞いて、自分が言える方を使っていました。また牛のことを指して「モーモー」と言っていたところから、英語の「More」(アメリカ英語ではモアですが、イギリス英語ではモオになります)という言葉を覚え、好きなご飯のおかわりを要求するのに便利なことを早々に発見していました。

    日英共通の言葉は双方から強化

    イギリスではサッカーのことを「Football」と言います。でも、これまで娘は私と日本語で話す中でしかサッカーという言葉に出会ったことがなかったので、パパと二人でお出かけした時に公園でサッカーをしている人たちを見て、「They are playing soccer」と言ったそうです。

    家に帰ってきたパパは「なんでうちの娘はアメリカ英語を話してるんだろう?」と私に呟きました。でも娘が使っていたのはアメリカ英語じゃなくて、日本語の「サッカー」という名詞だったわけですね。こんな風にイギリス英語だとちょっと不都合なこともありますが、「ボート」とか「バッグ」のような日本語でも英語でもいける言葉は優先的に教えると便利です。

    造語でコミュニケーション

    娘は1歳くらいの頃、黄色いものやキリンが大好きでした(2歳はピンクとテディベアの方が好きみたいですが)。でも1歳を過ぎた頃で「きりん」とも「Giraffe」とも言えなかった娘は、勝手にきりんを「ジャジャ」と呼び始めました。あまりに可愛かったので、筆者もキリンはジャジャと呼ぶことに。

    そうやって「ジャジャ」という言葉が私たちの会話の中に定着していき、他の人には伝わらないながらも、親には自分の言葉で伝えられるコンセプトが増えたということで、コミュニケーションの楽しみを学んでいったように思います。あまりに自信満々に造語を使うので、私たちの周りのイギリス人はみんなハトは日本語で「ぽっぽ」なんだと思うほどになっていました。

    面白い音や効果音を使う

    面白い音の言葉はすぐに真似したり覚えたりしてくれます。「ねじねじパスタ」「シュワシュワの水」のような言葉は娘も好きですし、言うのを聞くのも可愛いですね。英語でも「sparkly」「squashy」「fluffy」など音が印象的で可愛い言葉はすぐに覚えて使ってくれます。

    その他にも普段の生活に無意味に効果音を入れるなどもしています。足踏みをしながら「どんどんどんどん」というと子供は面白がって動きとともに言葉も真似してくれます。「ピョーンピョーン」と言いながら飛べばそれも真似してくれ、次の朝には一人でぴょんぴょん言いながらやっていたりするものです。

    噛み砕いて本を読む

    言葉の発達を促すためには本を読み聞かせると言うのは鉄板ですよね。でも、まだ言葉があまりでない時や、語彙が少ない段階では、簡単な本でも理解しにくいものもあります。そんな時には、子供がわかりやすいように噛み砕いて要約して本を読み聞かせていました。

    月齢が低いうちは1ページを見る集中力もあまり長く持たなかったので、1ページ2、3文程度でストーリーの要約を伝えます。また絵を見て子供が興味を示したものや、日常の中で出会うことのあったものなどは、ストーリーと関係なくてもお話を膨らませるようにしました。

    興味のあるものであれば吸収が早いと言うのも教育心理学の基本ですから使わない手はありません。書かれている本のストーリーにとらわれず、教材の一つと考えて絵や文を子供に合うように変えて、使ってみると興味を持って読んでくれるように思います。

    会話しながら動画を見る

    育児のサイトには動画を見せすぎるとコミュニケーション能力が落ちる、言語発達が遅れるとも書いてありますよね。筆者もそれを恐れて動画を見せることには抵抗があったのですが、仕事のために使っているスマホやタブレット、パソコンが溢れている家にいて、動画を避けて通るのはなかなか難しい。

    筆者が意識しているのは、動画を一人で見せっぱなしにはしないことです。動画を見るときは大きなテレビ画面に出し、親子で座って見ながら、会話をするようにしています。動画に映っているものは会話のネタになりますし、雪山や海など、普段の生活で見られないものが映っていることもあります。そういうものの名前を教えるのには絶好の機会。

    またバイリンガル育児に関して言えば、英語のアウトプットが強い時は日本語の動画を見せる、あるいは英語の動画を見ながら日本語で会話をする、ということを意識しています。もちろん日本語の動画を見ながら英語で会話もできますね。娘は動画を見ながらたくさんの新しい語彙を増やしてくれました。

    子供言葉に執着しない

    月齢が低いうちは、筆者もオノマトペを意識して話ていました。「にゃんにゃん」「ブーブー」「もーもー」、娘の初期の語彙には動物の鳴き声などもたくさんあります。でも、筆者は子供だというよりは友達感覚で娘に話しかけていたので、そんな言葉子供にわからないような、というような語彙もあえて使って自然な文で話しかけるようなこともありました。

    よって娘の語彙は、「楕円」とか「正方形」とかそういうものも入っています。子供に教えるなら、まずは「卵形?」とも思ったのですが、卵形と楕円は数学的に異なる図形ですよね。正方形は英語で「Square」で、日本語で「四角」と言ってしまうものを正方形と長方形で区別するので、やむを得なく教えましたが、すんなり覚えてくれました。

    日本語に言い換える

    子供が英語での言い方しか知らない言葉があったり、文を英語で作ったりする時には、「そうなんだ、ーーーなんだね。」と日本語に訳して文全体を言い直すようにしています。すると日本語の正しい文を繰り返して、単語ではなく一文として使えるようになってくれることも多いです。

    単語ではなく、フレーズや文で教えることもポイントのように思います。特に、英語を覚えるときはリズムで覚えるためか、単語ではなくフレーズや文で覚えていきます。例えば「I want to」のようなフレーズは、自分の欲しいものを手に入れるために絶対必要な文だと娘は知っています。でも何でも当てはめればいいと思って「I want to 抱っこ」のような使い方もしてしまうので、正しい言語の組み合わせに直してあげる必要があります。

    英語と日本語で同じ文を言う

    うちはパパが日本語が話せないため、パパにもわかってもらうためには英語で言う必要があります。例えば「Why don`t you go out with daddy?」なんて言う時は、2人にわかるように声掛けする必要がありますね。でも、そう言う時、英語で言いっぱなしにしないで、その直後に「パパとお出かけしてきたら?」と日本語でも同じ文を繰り返すようにしています。

    これをすると娘は日英の対応を学ぶようで、ママの対応を真似して筆者が日本語で何か言っていると、パパにもわかるように英語に訳してくれるようなこともあります。「ママは〜って言ってるのよ」と自信満々にパパに伝えるのを見ると笑ってしまいます。

    正しい文法で言い直す

    娘は文法はわからないので、どんな文章でも「ーではない」と言う時に「didn’t」と言う語を当てはめて使っていました。「don’t」や「isn’t」になる場合もあることを、一文として正しい文を示して教えています。直さないとずっと間違ったまま使っていることがありますが、直すと素直に聞いてくれて覚えてくれたりするものです。

    話すことを楽しむ

    たまに娘は筆者に「マミー、携帯見ないで!」と申し立てをすることがあります。パパに「牛乳買い忘れたから買ってきて!」というメールを送っていただけということもあるのですが、何よりも娘はママと話したいと思っていると言うところが一番大切だと思います。

    最近は私がママ友と公園で喋っていると不服そうにしてくることもあるのですが、ママが一番の話し相手だと思ってもらえているうちが花ですよね。筆者は娘と話すのが純粋に楽しいのです。予想だにしていない角度で物事を見ている子供の感性には毎日幸せをもらいます。

    言葉が遅いとか、バイリンガル教育だとか言うよりも、世界の人とたくさん話ができて楽しい、そして自分のルーツの文化の言語スキルを持っているというところにフォーカスを置いて、筆者は2つの言語を教えていきたいなと思っています。