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イギリスは英語でなんという?【4つの国の連合王国】

    イギリスという国は皆さんもご存知だと思います。日本語では「英国」と呼ばれることもありますね。でも、イギリスの国名を英語で言うときの正式名称はご存知でしょうか?「United Kingdom(UK)」が一般的な呼び方です。でもイギリスを指す英語は他にもいくつか存在します。

    イギリスの英語の正式名称は「The United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland」です。でも長いのであまりフル名称で書かれることはなく、イギリスでも一般的には「United Kingdom」あるいは略して「UK」、また「Great Britain」「Britain」などと言われることもあります。それ以外にも「England」という言葉を使うこともありますね。

    これらの呼び方にはそれぞれ正確には意味の違いがあります。この記事では、イギリスを英語でなんというのかについて、少し説明してみたいと思います。

    イギリスは英語でなんという?

    英語でフランスは「France」、スペインは「Spain」、イタリアは「Italy」とまあわかりやすいのに、英語圏であるイギリスの国名の英語の読み方は「ユナイティッド・キングダム」ってなんだか複雑ですよね。イギリスを指す日本語には「英国」という名称もありますし、日本人にとっては結構ややこしい国名の一つです。

    United Kingdom

    この記事の冒頭でもお話しした通り、イギリスの英語の正式名称は「The United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland」です。これを日本語に訳すと、「グレートブリテン及び北アイルランドから成る連合王国」となります。つまり正確にいうと、イギリスは複数の王国からなる連合国なわけです。

    政治団体としてのイギリスは、イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの4つの構成国から構成されている議会制民主主義の立憲君主国で、首都はロンドンに置かれています。これを略し「United Kingdom(ユナイティッドキングダム)」あるいは「UK(ユーケー)」などと言ったりします。これがイギリスという国全体を指す言葉になります。

    Great Britain

    それに対して「Great Britain (グレートブリテン)」は、イギリスを構成する 4 つの国のうちの 3 つ、イングランド、スコットランド、ウェールズを含むブリテン諸島最大の島のことを指しています。 アイルランド島にある北アイルランドは含まれません。 「グレートブリテン」という用語は、英国全体を指す言葉として、GBという略称とともにに非公式にはよく使用されますが、厳密には北アイルランドは含まれません。先日イギリス人でもそれを理解していない人に出会ったので説明してあげました(笑)。

    ちなみにイギリス人は英語で「British」と言います。「He is British.」などと使いますね。「UK」を使った言葉はないので、「He is from the UK.」などとなります。

    イギリス連合王国の4つの国

    イギリスを構成する4つの国はそれぞれ独自のアイデンティティを持っていますが、国際的な政治団体としては一般的に私たちがイギリスと呼ぶ国の一部です。4つの国のどこの出身者も、同じ国籍で同じパスポートを持っているということになります。でもそれぞれの国には地方議会が置かれているので、日本の地方自治体よりはもう少し独立した政治体制を敷いているということになります。

    England

    4つの国の中で面積が最大で人口も最も多いのがイングランドです。口語的には「ユナイティッドキングダム」や「グレートブリテン」と同じ意味で使用されることもあります。でも正確には、グレートブリテン島の南部に位置し、北はスコットランド、西はウェールズと国境を接している、グレートブリテン島の一部の地域がイングランドと呼ばれる場所です。イングランドの首都はロンドンですが、ユナイティッドキングダム全体の首都もロンドンということになります。

    イングランド出身の人は「English」と呼びます。例としては「He is English.」となります。

    Scotland

    スコットランドはグレートブリテン島の北部に位置し、南はイングランドと国境を接している地域のことを指します。スコットランドの首都はエディンバラで、歴史的、文化的重要性で知られています。スコットランドには、独自の法制度と独自の教育制度があります。言語にも少し違いがあって、スコットランドの公用語は英語だけではなくスコットランド・ゲール語です。

    スコットランド出身の人は「Scotish」と呼びます。例としては「He is Scotish.」となります。

    Wales

    ウェールズはグレートブリテン島の西部、イングランドの西側に位置し、東側はイングランドと国境を接している地域のことを指します。ウェールズの首都はカーディフです。「Cymraeg」として知られるウェールズ語は、ウェールズで英語とともに公用語となっています。

    ウェールズ出身の人は「Welsh」と呼びます。例としては「He is Welsh.」となります。

    Northern Ireland

    北アイルランドはグレートブリテン島ではなく、アイルランド島の北東部の地域になります。南と西はアイルランド共和国と国境を接し、北はスコットランドと海上境界を共有しています。北アイルランドの首都はベルファストです。北アイルランドにはアイルランドとの関係の上でも複雑な歴史があり、その憲法上の地位の問題は重要な政治的議論の焦点となっています。アイルランド共和国はEUメンバーであることから、イギリスのEU離脱に伴う国境の扱いについても様々な議論を呼びましたね。

    北アイルランド出身の人は「Northern Irish」と呼びます。例としては「He is Northern Irish.」となります。

    イギリスの異なる名称の使い分け

    イギリスを意味する英語には、複数の意味の異なる言葉が使われることは理解いただけたと思います。これは、政治や地理的な違いだけではなく、特定の分野やある組織への国の登録時に生じた違いが反映されていることもあります。

    サッカーのイギリス代表は英語でなんという?

    その典型的な例がサッカーではないでしょうか。FIFAワールドカップなどを見ていると、イギリス代表チームというのは出てきません。だからと言ってユナイティッドキングダム代表チームやグレートプリテン代表チームがあるわけでもありませんね。

    サッカー大国であるイギリス代表チームが存在しないのは、FIFA(国際サッカー連盟)という組織への登録が、United Kingdomという名称のもとに括られる連合王国としてなされていないからです。FIFAがイングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドを統合した「グレートブリテン」チームではなく、別々の代表チームとして認めている理由は、英国の歴史的背景にあります。

    イングランド、スコットランド、ウェールズ、および北アイルランドにはそれぞれ独自の独立したサッカー協会があります。FA (イングランド)、スコットランドサッカー協会 (スコットランド)、ウェールズサッカー協会 (ウェールズ)、および アイルランドサッカー協会(北アイルランド)といったそれぞれの協会は FIFA創設よりも前に設立され、常に別個の組織として運営されてきました。英国におけるサッカーの歴史は長く、それぞれに独自のサッカーアイデンティティがあります。

    通常FIFAへの登録は各国が1つの代表チームを持つ形でなされていますが、イギリスに関してだけは特別に、FIFAワールドカップやUEFA欧州選手権などの国際大会において、4つの国が個別の代表チームとして別々に競技参加できるような取り計らいがなされました。これは1946年に結ばれた「ホームネーションズ協定」と呼ばれるものです。この協定により、英国内の4つの国はそれぞれ、国際舞台で独自のアイデンティティを維持したまま戦えるようになっているのです。

    オリンピックのイギリス代表は英語でなんという?

    これに対して、オリンピックを統括する国際オリンピック連盟(IOC)への登録は、イギリス全体で1つの登録となっています。オリンピックやパラリンピックのイギリス代表チームは通常英語でグレートブリテンという言葉がもとになった「Team GB」などと呼ばれます。

    これは「British Olympic Association」という国内団体がイギリス代表のオリンピックチームを管轄している関係からそのように呼ばれるわけですが、実際のところはグレートブリテン島の外にある北アイルランド出身の選手もこの代表チームに含まれています。

    さらに、オリンピックのサッカートーナメントでは、オリンピックのために特別にイングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドをまたいだ合同チームを編成します。でも実際のところ、合同チームに参加するのはイングランドとウェールズの選手が主で、歴史的にも異なるサッカーアイデンティティを持つスコットランドの選手はほとんど参加することがないと言われています。

    ちなみに、ウィンブルドン優勝経験も持つイギリス人テニスプレーヤーのアンディ・マリーはスコットランド人ですが、勝つとイングランドのメディアに「British」と書かれ、負けると「Scotish」と書かれるという話もあります。微妙な意味やニュアンスの違いでそんな使い分けもされているというのは面白いですね。

    まとめ

    この記事ではイギリスという国を英語でなんというのかについて見てきました。以下の7つの言葉の使い方の違いについて理解していただけたのではないかと思います。

    • The United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland
    • United Kingdom (UK)
    • Great Britain (GB)
    • England
    • Wales
    • Scotland
    • Northern Ireland

    長年イギリスに住んでいるものの感覚からすると、United Kingdomという言葉がパスポートや政治的な文脈で使われる少しフォーマルな言葉という印象を持つのに対して、Great Britainという言葉はポスターやデザインなどに使われるもう少しカジュアルな印象を与える言葉という違いもあるように思います。

    これらの言葉の違いを理解して、イギリスへの理解を深めていただけると嬉しいです。ちなみにイギリス出身者に、「あなたの出身国はどこ?」と聞くとその答え方によってアイデンティティの違いがわかるとも言われていますので、ぜひ試してみてくださいね!