英語の発音の話題にもよく登場する「フォニックス」という言葉をご存知でしょうか?フォニックスは英語圏の学校教育でも使われる、英語の発音とアルファベットで書かれた綴りを一致させる方法です。
英語の発音を学ぶ際に便利なツールの一つで、表になっているものを見たことがある人もいるかもしれませんが、フォニックスはみなさんがおそらく学校の英語の授業で習った発音記号とは別のものです。
ちなみに、英語の発音記号については以下の記事をご覧ください。
この記事では、フォニックスとは何か、そしてフォニックスを使った英語の発音の学び方についてお話ししていきます。
フォニックスとは何か?
発音と綴りの関係ルール
フォニックスは、英語の発音と綴りの関係についてのルールを学ぶことで、英語単語や英文に触れた時にも発音と綴りを関連づけられるようにする方法です。
フォニックスは外国人が英語を学ぶのに限った方法ではなく、英語圏の子供たちも学校でフォニックスを学びます。私たち日本人が、学校でひらがなやカタカナを学びながら、読み書きを学んだのと同じような過程ですね。
発音と綴りの規則性を学ぶ必要性
ただ問題は、日本語と違って英語は書かれた通りのアルファベットをそのまま読み上げれば正しい英語の発音になるとは限りません。例えば、「High(高い)」という単語では、「gh」は発音されませんね。これは第二外国語として英語を学ぶ私たちにとっても厄介ですが、英語圏の子供たちにとっても知らなければ間違えてしまうものなのです。
そのため、フォニックスを使って綴りと発音の関係のルールを学ぶ必要があるのです。フォニックスを学ぶと、英語の綴りを見て、そこから正しい英語の言葉を読み上げることができるようになります。
音素に基づくフォニックスの表
フォニックスの一覧表としてよく見かけるものには、以下のようなものがあります。これは音素(英語では「Phoneme」と呼ばれます)を表すフォニックスの表です。左から縦に見た5列が子音の音、右側4列が母音の音になります。
s | t | p | n | m | a | e | i | o |
g | d | ck | r | h | u | ai | ee | igh |
b | f | l | j | v | oa | oo | oo | ar |
w | x | y | z | qu | or | ur | ow | oi |
ch | sh | th | th | ng | ear | air | ure | er |
音素(Pheneme)とは?
音素というのは、発音するときの一番小さな音の単位です。つまり、英語の発音はこの表にある音素の組み合わせからできているということができます。この表には45の音素が載っているので、英語には45の音があり、英語はその組み合わせとして発音できることがわかると思います。
日本語と違うのは、音のもっとも小さな単位を表すのに、2つ以上のアルファベットを必要としているところです。ひらがなやカタカナは書かれた一文字に一つの音が対応しますが、英語ではそうなっていないため、フォニックスを学ぶ必要があるのです。
よって、上記のフォニックスの表にある綴りのそれぞれに英語の発音を対応させて覚えることで、どんな綴りの単語でも正しく発音できるようになるというわけです。
ただ、音声学的に言うと、この音素の表にある「x」は [k] と [s] の組み合わせ、「qu」は [ k ] と[ w ] の組み合わせですので、この表を発音記号と対応させてみると、通常綴りとは対応しない英語の音である「シュワ」と「グロッタルストップ」が抜けていることになります。
なぜ同じものが2回出てくるのか?
上の表を見てもらうと、「oo」と「th」が2回ずつ登場しているのがわかると思います。その理由は、英語では同じ綴りでも異なる発音になることがあるからです。
例えば、「book」と「boots」という2つの単語がありますね。日本語でも、「ブック」と「ブーツ」と言うように、同じ「oo」の綴りでも2つの単語の発音は異なります。
同様に、「think」と「mother」では、「シンク」と「マザー」で、「th」の発音は異なります。よって音素に基づくフォニクスの表では、同じものを2回示すことで2つの異なる発音があることが示されているのです。
書記素に基づくフォニックスの表
音素を示すフォニックスの表の他に、書記素(英語では「Grapheme」と呼ばれます)に基づくフォニックスの表もあります。
書記素とは?
書記素は一つの音を表すのに使われる綴りの最小のまとまりのことを指します。よく使われるフォニックスの表には、以下のようなものがあります。
s | a | t | p | i | n | m | d | g |
o | c | k | ck | e | u | r | h | b |
f | ff | l | ll | ss |
j | v | w | x | y | z | zz | qu | ch |
sh | th | ng | ai | ee | igh | oa | oo | oo |
at | or | ur | ow | oi | ear | air | ure | er |
ay | ou | ie | ea | oy | ir | ue | ue | aw |
wh | ph | ew | ew | oe | au | ey | a-e | e-e |
i-e | o-e | u-e | u-e |
同じ綴りでも違う音になる
例えば「ow」という綴りを例にとってみましょう。「Snow」と「Now」という2つの単語の両方に「ow」という綴りが使われています。カタカナで書いても「スノー」と「ナウ」という2つの異なる発音になりますね。
また、「ch」という綴りでも、「chef(シェフ)」と「chemistry(ケミストリー)」では発音が異なっています。同じ綴りでも異なる発音になる場合があること、そして異なる場合はどのような発音が可能なのかということがお分かりかと思います。
表に登場するそれぞれの綴りを持つ単語の例を見ながら単語の発音を対応させていくことで、綴りと発音の規則性を学ぶことができます。
フォニックスと発音記号
フォニックスの利点
発音記号と違い、フォニックスは実際の単語に現れる綴りとの関係で発音を学ぶものです。よって、この綴りのときはこの発音になる、というように、書かれたものと発音された音を直接結びつけることができるようになります。
大人が発音矯正をするなら発音記号
その一方で、子供の頃に英語を聞いて育ってこなかった日本人が、大人になってから英語の発音を矯正したいと思っているのであれば、フォニックスよりも発音記号の方が発音矯正のツールとしてより効果的だと私は考えています。
なぜかというと、そもそも英語に現れる正しい音がわからないのに、綴りと対応させたところで英語の発音を改善することはできないからです。英語圏の子供たちにとってのフォニックスは、小さい頃から英語の音自体は聞いて育ったわけですから、知っている音を綴りと対応させるという作業になります。
効率は発音記号の方が良い
さらに、フォニックスの表は、たくさんの単語に出会いながら規則性を学んでいくため、上記のように綴りの組み合わせのパターンをたくさん学ぶ必要があります。また音素と書記素が同じアルファベットを使って記述されるために紛らわしいのです。
一方、発音記号は26の子音と19の母音が全てで、それ以上のものは登場しません。英語の基礎となる45の音をマスターすれば、全ての単語にその音の規則性を適用することができるため、簡潔に体系的に発音を学ぶことができるのです。
発音矯正トレーニング
私が教えている英語の発音矯正トレーニングは、フォニックスを一部取り入れているところもありますが、基本的には発音記号をベースにしています。英語がネイティブでない日本人に効果的なプログラムとなっていますので、発音を矯正したいと考えている方は、ぜひ一度トレーニングを受けてみてください。