プレゼンをするときいつも緊張してしまう、あがり症で人前で話すのが苦手、という人のために、この記事では大事な場面で緊張しないための対策についてお話したいと思います。
緊張は自分や他人に対するいくつかの間違った認識から来ていることがあります。視点をちょっと変えてみるだけでもだいぶ楽になります。そのほかにも緊張しないために事前準備できることや直前にやれることもありますので、ぜひ参考にしていただければと思います。
プレゼンで緊張しないための対策
- 人前で話すのが苦手なのはあなただけではない
- 緊張と興奮は同じもの
- 他人はあなたにそれほど興味を持っていない
- 緊張を緩和する体のほぐし方
- 緊張は繰り返すことで和らぐ
- パニックを回避する事前のシミュレーション
- 心拍数を上げる運動の意外な効果
- プレゼンも友達に話すのも結局は同じこと
- 緊張しなければ最高のパフォーマンスは出せない
人前で話すのが苦手なのはあなただけではない
ロンドンで行われたあるビジネスコミュニケーションのセミナーに行ったとき、主催者が「人前で話すことに恐怖を感じる人はどれくらいますか?」と参加者に問いかけました。どれくらいの人が手を挙げたと思いますか?そこにいたほぼ全員です。緊張というのは人が原始的な生活をしていた時代、敵に遭遇したときに最善の状態で状況の対処に当たれるようにという反応が脳に残っている名残だと言われています。
人前で話すのが苦手、あるいは自分はあがり症だと思う人にまず知ってもらいたいのは、世の中のほとんどの人がプレゼンをしたり人前に立って何かをしたりすることを苦手だと感じているということです。私もその一人です。恐怖心や苦手意識を持っているのはあなただけではありませんから、人前で話すのが苦手だということに劣等感を覚えなくても大丈夫です。
緊張と興奮は同じもの
生理学的には緊張と興奮は同じ状態だと言われています。緊張というのは、脳内神経伝達物質のセロトニンやノルアドレナリンのバランスが崩れ、交感神経が活発になり自律神経が乱れた状態です。身体の反応としては、心拍数が上がって動悸が激しくなったり、手足が震たり、また汗が出たり、顔が赤くなったりします。実はこの状態、興奮したときにも起こっていませんか?
私たちはふだんこの同じ生理的反応を2つの全く異なる側面から捉えています。つまり「興奮」が是非とも得体ポジティブな感覚であるのに対して、「緊張」は消し去りたいネガティブな感覚だとしているのです。例えば、いつも憧れていた有名人にあったとき、あなたの体は上記のような状態を経験するでしょう。それは緊張であると同時に興奮でもあるのではないでしょうか?
プレゼンをする前も実は同じ状態です。あなたの持つ素晴らしいアイディアを誰かと共有できるという興奮に溢れている、だこそ心拍数が上がって手に汗を握っている、そう捉えてみると、緊張は決して不快なものではなくなるはずです。
他人はあなたにそれほど興味を持っていない
プレゼンや人前で話すときに緊張する理由をよく考えてみると、「失敗して恥を書いたくない」、「変なことを言って批判されたくない」、あるいは「話し方が下手で頭が悪いと思われる」など、他人があなたのことをどう思うかというところに、負の感情を抱いているのではないでしょうか?
でも実は他人はあなたが思うほど、あなたに興味や関心を持っていません。フォードバックをしてくださいとお願いした場合などでない限り、あなたのプレゼンの出来をどうこう言おうと思っている人はいないのです。むしろ人は自分がどう思われているか考えるので精一杯です。自分に対して誰よりも批判的なのは自分です。ですから自分の採点で100点の出来でなかったとしても、他人から見れば十分な出来であることがほとんどです。
世の中には確かに他人の揚げ足を取るような人もいます。でもそういう人は卑屈なやり方でしか自分を良く見せることができない人なので、あまり気にしないようにしましょう。
緊張を緩和する体のほぐし方
緊張したときは深呼吸をするというのは基本ですね。緊張していると呼吸が浅くなるので、おもいっきり息を吸いこんだあと、今度は肺の空気が空になるまでゆっくりと息を吐いていきます。これを3、4回繰り返すと、少し心拍数が落ち着いてきます。息を完全に吐き切ったらみぞおちのあたりにぐっと力を入れて、それから力を抜いてみてください。少しリラックスできたように感じませんか?これは腹式呼吸の準備にもなります。
緊張すると体が硬直してしまいます。よってストレッチをするのも有効な手段です。手の指を交差させて合わせ、手のひらを天井に向けて腕を伸ばします。それから腕を左右に引っ張りながら両脇腹を交互にストレッチします。両手を下に下ろして肩を回すのもいいですね。
それから女優さんから舞台に立つ前のテクニックとして教えてもらったのが、前屈をして手をぶらりと下に垂らし、左右に弧を描くように揺するストレッチです。髪の毛が乱れるのと、公の場でやりにくいので、私はトイレでやることがあります。また口の中で、舌を使って上下の歯茎と唇の間をなどるというのも滑舌を良くする準備になります。
緊張は繰り返すことで和らぐ
ヘビでも蜘蛛でも、高所でも閉所でもいいのですが、何かに対する恐怖症を克服するためには、安全な形でその恐怖の対象物に接触するということが第一歩になります。私たちが恐怖を覚えるのは、過去にその恐怖を及ぼすものになんらかの危害を加えられたからです。それは私たちの人生の中での経験によることもあれば、生物として進化の過程で毒蛇や毒蜘蛛に襲われたという遠い記憶によることもあります。
そういうトラウマは、毒を持たないヘビに向き合うことなどで克服していくことができます。最初は遠目に見るだけ、次は近くで見る、それからだんだんと触れる、長時間触れる、首に巻くなど日を追って近づくことで恐怖を軽減させることができるのです。プレゼンに対する緊張も同じです。何度もプレゼンをしている人が自信を持ってプレゼンできるのは、これと同じ原理が働いているからだと言えます。
パニックを回避する事前のシミュレーション
プレゼンでの緊張を和らげるために、本番とできる限り近い環境でシミュレーションを起こって置くという方法があります。プレゼン当日家から電車に乗って会場まで行き、会場からプレゼンをやるホールへ入り、登壇して話し始める。それをGoogleマップのストリートビューなどを使ってできるだけ本番に忠実にシミュレーションしてみてください。
可能であれば本番で着る服も着用して、プレゼンのシミュレーションをやってみてください。その過程でできる限り緊張を感じられると最高です。そうすると、脳がシミュレーションで経験したのと同じことを2度目に経験する本番の緊張は、絶対にシミュレーションのときより緩やかなものになるからです。
私はイギリスのテレビ番組の生放送でコメントを求められたとき、事前に自分で質問を想定してそれに答えるシミュレーションをしました。そのときとても緊張してパニックを起こして、これでは本番やばいなと思ったのですが、本番司会者から質問されて話し始めるとまったく緊張せずに自分の思うことを自由に言えたという経験があります。不思議なものですが、シミュレーションで緊張しておくとなぜか本番の緊張が和らぐのです。
心拍数を上げる運動の意外な効果
緊張すると私たちの心拍数は上がります。緊張に慣れるというのは、心拍数が上がった状態に慣れるということです。それを意図的に作り出すことができるのが、運動して心拍数をあげることです。ジムのトレーニングでも、心拍数をあげる運動を繰り返すと、同じ程度の運動をしても心拍数が上がりにくくなります。これと同じことが緊張したときにも起こります。つまり普段から心拍数をあげる身体的なトレーニングをしていると、緊張したときの心拍数が上がりにくくなるのです。
緊張というのは精神的なことのように見えますが、実際は私たちの身体と深く関連しています。よって緊張しやすい人は心拍数をあげる運動を普段から行うのがおすすめです。私は8階に住んでいるのですが、緊張緩和のトレーニングのためにできるだけ階段で8階まで上がるようにしています。
プレゼンも友達に話すのも結局は同じこと
これからプレゼンテーションをするのだと意気込んでしまうと、何か大きな山を越えなければいけないような気がします。でも、あなたの専門知識や、あなたの研究の成果、あなたの持っている面白いアイディアを、友達に話して聞かせてあげるのだったらどうでしょう?あなたの知っていることを知っている人に話すのですから、なんということはないですよね。
プレゼンをするというと私たちはどうしても大事だと捉えて構えてしまいがちですが、実は大勢に対して話すのも、友達数人に話すのも、同じことです。本当に素晴らしいプレゼンというのは、プレゼンターが親しい人に語りかけているように聞こえるものです。ですからあまり構えすぎずに、あなたの言葉で、あなたの持っている素敵な考えを伝えるというつもりでプレゼンに臨んでみていただきたいと思います。
緊張しなければ最高のパフォーマンスは出せない
いい記録を出すことができなかったスポーツ選手のインタビューの中で、「スタート前に緊張感を感じなかった」という言葉を時々耳にします。大舞台に慣れている一流のスポーツ選手は、どんな大会でも緊張せずに自分の持てる力を発揮するのかというと、それは違うのです。この記事の最初にも書いた通り、緊張というのは敵に遭遇したときに、殺される前に一目散に逃げるなど、危機を回避するための最善の行動を取れるように心身を準備させる状態です。
よってスポーツ選手が世界の舞台でベストのパフォーマンスを出すためには、緊張することが欠かせないのです。私自身、何度練習しても詰まらずにいうことのできなかった原稿を、本番だけ言えたという経験もあります。ですからあなたがプレゼンを前に緊張しているのは良いことです。それはあなたが最高のプレゼンをするのを助けてくれるものなのです。