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子供に英語を教えるなら単語だけではダメ【英語の上達に不可欠なもの】

    子供の頃から英語に触れさせて、世界に通用するバイリンガルとして育ってほしいと考える親御さんは多いかもしれません。筆者はイギリスで2歳の女の子を育てる教育テクノロジー博士課程学生ママです。私自身は、日本で生まれ育ち、苦労して英語を習得し、やっとイギリスで一人前に生きていけるようになった経験を持っているので、子供の言語能力の発達には人一倍関心があります。

    自分の娘の言語の発達を観察しながら、最近ふと思ったことがあります。自分が幼稚園の頃に日本で受けた英語教育がいかに響かないものであったかということです。はっきり言わせていただくと、「アップル」「キャット」などと絵を見ていっているだけではダメです!英語の動画をなんとなく見せておくのも英語教育の効果はありません!

    この記事では、早期に子供に英語の言葉を教えるにあたって、今一度皆さんに考えていただきたい重要な原理についてお話ししていきたいと思います。

    子供の英語習得に不可欠なもの

    子供の英語習得に欠かせない2つの原理

    以前、子供バイリンガル教育とは関係なく、英語を習得するための心得として私が絶対に欠かせないと考える英語上達の「2つの原理」についてご紹介したことがあります。その原理とは何かというと以下の2つです。

    1. 誰かとどうしても話してみたい、繋がりたいという熱望(Passion)
    2. がむしゃらにコミュニケーションをとって通じ合えたときの喜び (Pleasure)

    この2つは、英語が苦手だった私が10代の頃初めてイギリスに来て、英語を真剣に勉強しようと思うきっかけとなった時に働いた2つの感情です。ロンドンという世界的な大都市で、ヨーロッパ中、世界中から集まった人々と知り合い、言葉を交わし、私はここで生きていきたいと思うようになった時に働いたのがこの2つの感情でした。それとまったく同じ2つの原理がバイリンガル環境で育つ娘の言語能力の発展に大きな影響を与えているということを最近よく実感しています。

    子供に英語を教えるなら魔法のフレーズを

    私自身が日本の幼稚園で受けた英語教育では、紙に印刷された動物やフルーツの絵を見て、その名前を教えてもらうというものでした。確かに「Apple」とか、「Cat」なんて単語はそこで教わったのかもしれません。でもそんな英語教育を受けながら幼いながらに「だから何?」という思いを抱いた記憶が微かにあります。だって、りんごも猫もそれほど好きではなかった私には、その言葉に前述のような話したいという熱望も、通じた時の喜びも見いだせなかったからです。

    初めは日本語の方が得意だった娘が1歳代で口にしていた英語の言葉に、

    I want(〜が欲しい。)

    というのがあります。彼女は「I」が自分を意味する主語だということも「Want」が欲しいという意味の動詞だということもおそらく知りませんでした。でも、「〜が欲しい」を意味するこの英語のフレーズが、彼女にとっては魔法の言葉だったことは皆さんもお察しがつきますよね。だって、このフレーズを唱えれば、自分の欲しいものが手に入るわけですから!

    娘は、食べたいものや欲しいおもちゃを指さして、「I want」とよく言っていました。これは、前述の2つの原理をよく反映したフレーズでもあります。欲しいものを伝えたいという欲求、そしてそれが伝わった時に欲しいものが手に入るという喜びがそこにはあるからです。不思議なことに、彼女は欲しいものの名前よりも、この便利なフレーズの方を先に学びました。

    どちらかというと英語の名詞の語彙は、日本語のオノマトペに近い、動物の鳴き声などの方が多かったですが、それは、生理的な欲求とは関係なくとも、響きの面白い音や喃語の発展で、なんらかのコンセプトを親に伝えコミュニケーションできるという喜びから来ていたように思います。

    その後、徐々にものの名前を覚え始め、日本語と英語の名詞を時々混ぜこぜにしながら、「I want milk」「I want bear」(もちろん本物のクマではなく、テディベアのことです)などと、主語と動詞、目的語を備えた完全な英文の3語文を話せるようになっていきました。

    その他にも彼女が早くに使えるようになったフレーズには

    Can I?(〜してもいい?)

    があります。このフレーズもまた子供たちにとって自分の欲求を満たすのに必要なフレーズなのがお分かりいただけるかと思います。何か食べたければ「Can I eat?」、お外に行きたければ「Can I go out?」と言って自分の要求を伝えることができます。このフレーズもまた、動詞の語彙が増えると同時に、3語文の幅が広がっていきました。

    この二つのフレーズを見ていただくと、日本語よりもストレートで覚えやすいのも事実です。だって、「I want milk」は「牛乳飲みたい」と動詞の活用が求められますし、「I want bear」は「くまさんが欲しい」となって、牛乳の例とはかなり異なる印象の文になってしまいますからね。英語の方が子供にとってシンプルだったり、発音しやすかったりして覚えやすい言葉もあります。

    名詞を教えるなら身近で大好きなものを

    よって、小さいお子さんに英語を教えたいと思っているなら、ぜひ欲望を叶えられる魔法のフレーズから教えてあげてみて欲しいのです。そうすると、欲望が増えるごとに語彙が広がっていきます。どうしても欲しいものを手にいれるためには、そのものの名前を知らなければいけませんから、そこに必然的に高いモチベーションが生まれます。そしてその言葉を発して、欲しいものが手に入ると、それ自体がご褒美になるのです。

    上述のような魔法のフレーズにつながる名詞や動詞を教えてあげるところから始めましょう。教科書に出てくるようなアップルやオレンジではなく、その子が好きなものの名前を教えてあげてください。うちの子ならいちごやアイスクリームや、公園や砂場です(余談ですが今はそれを使ってアルファベットを教えていますよ)。

    親子で英語を使って会話しよう

    フレーズや大好きなものの名前を覚えるだけではまだ十分ではありません。外国語を覚えるには、絶対にコミュニケーションに使う必要があるからです。自分の欲しいものを言えた、それが伝わった、その結果欲しいものが手に入ったと言う循環を繰り返すことで、子供もコミュニケーションの楽しさを覚え、もっと話したい、もっと英語を勉強したいという気持ちになっていくはずです。

    本当に使える英語を身につけて欲しいのであれば、子供の英語教育は英会話教室や、学校の授業だけで終わらせず、お家でも使わせてあげてください。ご両親が英語が得意な必要はないと思います。一緒に会話をしながら学んでいけばいいのです。筆者は言葉は年齢とともに常に成長していくものだと考えています。たとえ母国語であっても一度習得すれば終わりというものではありません。つまり使い続けることが大切なのです。

    小さなお子さんなら、上記のような簡単な例で構いません。「I want orange juice!」とお子さんが言ってきたのであれば、「Sure, it’s so hot today. You must be thirsty!」などと返してあげましょう。きょとんとしているようなら、同じことを日本語で繰り返してあげればいいのです。そうやって、娘は2ヶ国語の対応を学んでいきました。

    筆者もまた、英語と日本語の両方で2歳の娘と会話を重ねる日々です。たまに見飽きたアニメはフランス語で見るなどもしています。ぜひ子供たちに魔法のフレーズを教えてあげてください。そしてそれを使わせてあげていただきたいと思います。伝えたいという熱望、そして伝わったという歓喜、その正のサイクルでお子さんの英語への意欲を掻き立てていただければと思います。