ロジカルシンキングという言葉をご存知でしょうか?ビジネスや学校、家庭など、様々な場面で論理的な思考や発言はそのパワーを発揮します。
筆者はイギリスで教育テクノロジーの研究をする博士課程の学生です。修士号もイギリスで取得しているのですが、以前、イギリスの大学院に留学してよかったことという記事の中で、「論理的な思考ができるようになったこと」というのをあげました。
その後メディアやジャーナリズムに関わってきた社会人生活の中でも、そしてジャーナル寄稿のための論文や、博士論文を書く現在も、ロジカルシンキングというスキルにはずっと助けられているように思います。
余談ですが、先日2歳になる娘が、歩いている時に躓いて膝を擦りむきました。夏でショートパンツを履いていたので、直接地面に膝を擦って、かなり痛かったのでしょう。翌日も暑い日だったのですが、絶対長ズボンを履くと言って聞きません。
彼女曰く、「今日は長ズボンを履いたから、転ばない。」ということらしいのですが、彼女なりの論理展開に、ふと笑ってしまいました。正確には、「今日は長ズボンを履いたから、転んでもあまり痛くない。」かな。
この記事では、ロジカルシンキング(論理的思考)とそのメリット、そして英語やプログラミング言語を使う時にも役立つロジカルシンキングの考え方について、少し書いてみたいと思います。
ロジカルシンキングって何?
ロジカルシンキングは、日本語では「論理的思考」と呼ばれるもので、物事を筋道立てて考え、矛盾や誤りのない結論を導き出すための思考法です。日常生活の中で「どうしてこうなったんだろう?」と原因を探ったり、「この問題をどう解決すればいいだろう?」と方法を考えたりする場面が多々ありますよね。そうした時に役立つのがロジカルシンキングです。
ロジカルシンキングは、特別な才能や難しい理論ではなく、誰でも身につけることができるスキルです。ビジネスの世界だけでなく、勉強やプライベートの生活でも役立ちます。たとえば、友人との会話や家族とのやり取り、さらには日常のちょっとした選択にもロジカルシンキングは生きてきます。
ロジカルシンキングの基本的なポイント
原因と結果を明確にする
ロジカルシンキングの基本は、物事の「原因」と「結果」をしっかりと結びつけることです。たとえば、テストの点数が悪かった場合、なぜ悪かったのか、その原因を探ります。勉強時間が足りなかったのか、勉強方法が合っていなかったのか、体調が悪かったのか。原因を特定することで、次に何をすべきかが見えてきます。
前提条件を意識する
ロジカルシンキングでは、自分が考えた結論がどんな前提条件に基づいているかを意識することが大切です。たとえば、「早起きすれば時間に余裕ができる」と考える場合、その前提には「早く寝ることができる」「朝の時間が有効に使える」といった条件があります。前提が間違っていると、導かれる結論も間違ったものになるので注意が必要です。
一貫性を保つ
一貫性とは、考えの筋が通っていることです。たとえば、「健康に良い食べ物を選ぶべきだ」と考えるなら、その一貫性を保って、普段の食事でも健康的な選択をし続ける必要があります。考えが一貫していないと、自分自身が混乱したり、他人に伝わりにくくなります。
ロジカルシンキングの活用例
目標を立ててその達成を目指す
試験勉強の計画を立てるときに、ロジカルシンキングが役立ちます。たとえば、「今週は数学を集中的に勉強しよう」と決めた場合、その理由を明確にします。例えば、「数学は苦手だから時間を多く割くべきだ」とか、「数学の試験が最も早いから今優先する」といった具合です。そうすることで、勉強計画がただの思いつきではなく、論理的な根拠に基づいたものになります。
人間関係のトラブルを解決する
友人や家族とのトラブルに直面したとき、ロジカルシンキングを使って問題の原因を探り、解決策を見つけることができます。たとえば、「なぜ最近、あの友達と話すのがぎこちないんだろう?」と考えることから始めます。そして、何が原因かを特定し、それに対する具体的な対処法を考えます。相手にどう伝えれば誤解が解けるのか、どのような言葉を使うべきか、といった部分を論理的に整理することができます。
ビジネスでの意思決定をする
ビジネスの場では、様々な選択肢から最適な決定を下すことが求められます。例えば、新しいプロジェクトに取り組むかどうかを決めるとき、ロジカルシンキングが役立ちます。プロジェクトに取り組むメリットとデメリットを洗い出し、それぞれに対する影響やリスクを分析します。その上で、目標に対する貢献度やリソースの配分を考慮し、最も理にかなった選択を行うことができます。これにより、感情や一時的な勢いに左右されず、冷静で効果的なビジネス判断が可能になります。
人を説得するとき
人を説得するとき、ロジカルシンキングは非常に有効です。例えば、友人に一緒に旅行に行きたいと提案するとき、ただ「行こうよ!」と言うのではなく、その理由やメリットを論理的に説明します。「この旅行はリフレッシュできるし、費用も予算内だから、ストレス発散になるよ」といった具体的な理由を示すことで、相手に納得してもらいやすくなります。さらに、相手の関心事や懸念点を事前に考慮し、それに応じた対応策を提案することで、より説得力のある主張ができるようになります。
ロジカルシンキングのメリット
自分の考えが明確になる
ロジカルシンキングを身につけることで、自分の考えが整理され、明確になります。たとえば、何かを決めるときに、頭の中で「こうすべきかもしれない」「でも、別の方法もあるかも」とあれこれ考えることがあるでしょう。ロジカルシンキングを使えば、選択肢を一つずつ検討し、論理的に優先順位をつけることができるため、自分が本当に何を求めているのか、どう行動すべきかがクリアになります。これにより、自分自身が納得できる決断がしやすくなり、自信を持って行動に移せるようになります。
問題解決がスムーズになる
ロジカルシンキングは、複雑な問題を効率的に解決するための強力なツールです。問題を細かく分解し、原因と結果を明確にすることで、最も効果的な解決策が見えてきます。たとえば、仕事や勉強で行き詰まったとき、ただ感情的に対処しようとするのではなく、問題の本質を見極め、ステップバイステップで解決策を考えることができます。このように、論理的なアプローチを取ることで、困難な状況にも冷静に対応でき、結果として問題解決がスムーズに進むようになります。
説得力が増す
相手を説得する際にも、ロジカルシンキングは大いに役立ちます。自分の主張を論理的に組み立て、根拠を示しながら伝えることで、相手に納得してもらいやすくなります。例えば、何か新しい提案をする場合、そのメリットやリスクを明確に説明し、どうしてその提案が最適な選択であるのかを論理的に示すことができます。これにより、感情的な訴えに頼ることなく、相手に理解と納得を得ることができ、結果として説得力が大幅に向上します。
ストレスが減る
ロジカルシンキングを取り入れることで、日常生活の中でのストレスを軽減することができます。感情に流されず、物事を冷静に分析することで、困難な状況でも落ち着いて対処できるようになります。たとえば、緊急事態や予期せぬ問題に直面したときでも、論理的に考えることで最適な行動を選び、無駄な心配や焦りを抑えることができます。結果として、感情的な揺れ動きが少なくなり、日々の生活で感じるストレスが大幅に減少します。
論理学における論理の例
ロジカルシンキングに使える、物事を筋道立てて考えるための強力なツールが論理学の中にあります。論理的な推論を行ったり、論理的な議論を進めたりするためには、いくつかの基本的な論理構造を理解することが重要です。ここでは、代表的な論理の例をいくつか紹介します。
三段論法 (Syllogism)
三段論法は、2つの前提から1つの結論を導き出す推論の形式です。これにより、前提が正しければ結論も必然的に正しいことが保証されます。
- 前提1: すべての人間は死ぬ。
- 前提2: ソクラテスは人間である。
- 結論: ソクラテスは死ぬ。
この形式は、論理的な議論や分析の際に頻繁に使用される基本的な論理構造です。
仮言命題 (Conditional Proposition)
仮言命題は、「もし〜ならば〜」という形式で表される条件付きの命題です。これは、ある条件が満たされたときに、その結果が生じることを示します。
- 仮言命題: もし太陽が昇るならば、朝になる。
この場合、「太陽が昇る」という条件が成立した場合に「朝になる」という結果が生じると予測します。仮言命題は日常生活の中での因果関係を論理的に説明する際に役立ちます。
否定的三段論法 (Modus Tollens)
否定的三段論法は、条件が満たされていないことを確認することで、関連する結論も否定する論理構造です。
- 前提1: もし雨が降れば、地面は濡れる。
- 前提2: 地面は濡れていない。
- 結論: したがって、雨は降っていない。
この論理は、反証を通じて何かが成り立たないことを示す際に有効です。
仮言三段論法 (Modus Ponens)
仮言三段論法は、条件が成立した場合に、その結果が必然的に生じるという推論の形式です。
- 前提1: もし雨が降れば、地面は濡れる。
- 前提2: 雨が降っている。
- 結論: したがって、地面は濡れている。
ここでは、条件が確実に成立しているため、結果も自然に導かれます。仮言三段論法は、日常の意思決定や議論の中でよく利用されます。
排中律 (Law of Excluded Middle)
排中律は、ある命題が「真」か「偽」のいずれかであり、第三の選択肢は存在しないという原則です。
- 命題: 「このドアは閉まっている。」
この命題は「真」か「偽」のどちらかと考えるため、たとえドアが半開きであっても、論理的には「閉まっている」が「偽」であると判定されます。排中律は、論理的な二者択一を明確にするために必要な基本的原理であり、あいまいさを排除するために重要なものとされています。
まとめ
ロジカルシンキングは、ビジネスの文脈でよく語られますが、仕事だけに役立つ特別なスキルというわけではなく、誰でも日常的に取り入れることができ、生活を改善することができる考え方です。
冒頭では、アカデミックな書き物をしたりプレゼンをしたりするときに役立つという話をしましたが、それ以外にも、英語を話す時、プログラミング言語を書く時にも、ロジカルシンキングは非常に大きな助けになってくれています。
ちょっとした工夫で、物事を筋道立てて考えられるようになり、勉強や仕事、人間関係まで、あらゆる場面でその効果を実感できると思います。今からでも少しずつロジカルシンキングを意識してみてください。きっと、あなたの生活にプラスの変化が訪れるはずです!