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イギリスの教育制度はどうなっている?

    イギリスの教育制度

    イギリスの教育制度は、アメリカのものとも異なり、日本とは多くのことが異なります。日本の学校で英語の授業を受けると、幼稚園はKindergarten、小学校はElementary School、中学校はJunior High School、高校はHigh School、大学はUniversityと教わるのではないでしょうか?それゆえに英語圏の教育制度は日本と名前は違うけれど同じようなシステムなのだと思いがちですが、私自身イギリスに来てからそうでないということに気づきました。

    自分も子供を持つようになり、娘が7ヶ月になった時にNurseryと呼ばれる保育園に通い始めイギリスの教育システムの階段を上り始めました。当事者としてイギリスの教育制度を意識するようになったわけですが、イギリスの教育制度は結構日本と異なっているため、前提が違っていて結構やややこしい・・・。というわけで、この記事ではイギリスの教育制度についてまとめておきたいと思います。

    イギリスの教育制度

    イギリスと日本語で呼ばれている国は正確にいうと連合王国で、イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドの4つの国から成り立っています。そのそれぞれで教育制度は少しずつ異なるため、この記事ではロンドンを含むイングランドの教育制度について説明していきます。

    また、4月始まりの日本とは異なり、イギリスは9月始まりです。よって学年は9月1日から8月31日までのスクールイヤーと呼ばれる1年を基準に考えることになります。つまり、日本ではある年の8月生まれの子と9月生まれの子は同じ学年になりますが、イギリスでは違う学年になるということです。

    幼児教育 (Early Years Education)

    まず、日本で保育園や幼稚園にあたる就学前の幼児教育についてみてみましょう。年齢でいうと3歳から5歳が幼児教育に該当します。これは義務教育ではないため、それぞれの家族が選択して保育園などに通うかどうかということになります。

    イングランドでは2010年 9月以降、3歳と4歳のすべての子どもたちが、年間38週間にわたり、1週間に15時間の無料保育を受ける権利が与えられています。つまり、週に15時間までは無料で保育園に通わせることができるということです。逆にいうと、3歳未満の子供たちが保育園に行く場合は、両親がお金を払って行かせるということになります。

    イギリスの幼児教育は、公立の保育園や、小学校内のレセプション(後述)だけでなく、私立の保育園(Nursery)やチャイルドマインダー(Childminder)と呼ばれる少人数を集めてのベビーシッターのような制度などを含む、さまざまな環境で行われています。

    イギリスの保育園代は世界でも最も高いと言われていて、母親が仕事に戻れないなどの問題を抱えていることから、2024年4月より法律改定がなされ、2歳の子供にも週11時間の無料保育を受ける権利が与えられるなど徐々に拡大される計画となっています。

    義務教育のスタートは満5歳の9月からということになりますが、イギリスの教育制度には満4歳の9月から「レセプション(Reception)」と呼ばれる年が設けられていて、義務教育への準備期間としてフルタイムで小学校に通うことができる制度になっています。

    8月生まれの子供など4歳になったばかりでまだ小学校に通う準備ができていないと思われる子供の場合は、親の判断でフルタイムではなくパートタイムで通わせたり、中途入学させたりすることも可能ですが、満5歳になった子供はレセプションに通うことが義務付けられています。また、一部の小学校には保育園や児童センターが併設されている場合もあります。

    https://www.gov.uk/schools-admissions/school-starting-age

    初等教育 (Primary Education)

    続いて、初等教育です。年齢でいうと5歳から11歳に該当します。日本の制度では小学校にあたるものです。イギリスの小学校はElementary Schoolではなく、通常Primary Schoolと呼ばれます。ほとんどの公立の小学校では、男女混合クラスで授業が行われます。

    イギリスの教育制度における初等教育は、キーステージ1(Key stage1)とキーステージ2(Key stage2)と呼ばれる2つの段階に分かれています。キーステージ1は5歳から7歳、キーステージ2は7歳から11歳の年齢になります。初等教育の主な目的は、すべての生徒が基本的な読み書き能力と計算能力を達成すること、また科学、数学、その他の科目の基礎を確立することとされています。初等教育で義務付けられている必修科目は以下です。

    • 英語
    • 算数
    • 理科
    • デザインとテクノロジー
    • 歴史
    • 地理
    • 芸術とデザイン
    • 音楽
    • 体育
    • コンピューティング
    • 古典と現代外国語(キーステージ2)

    キーステージ1とキーステージ1の終了時の5月には、英語(つまり国語)と算数の試験によって評価を受けます。また初等教育1年目の終わりにフォニックスがきちんと理解できているかどうかのスクリーニングチェックも行われます。11歳になるとそのまま中等学校に進むというが通例ですが、イングランドでは8から14歳までの間にさまざまな年齢層に対応した異なる中学校を経由して進学する子供もいるようです。子供に合わせてさまざまな選択肢が用意されている分制度としてはちょっと複雑ですね。

    https://www.gov.uk/national-curriculum/key-stage-1-and-2

    中等教育 (Secondary Education)

    日本の中学校に相当するのが、Secondary Schoolと呼ばれるイギリスの中等教育学校です。11歳から16歳が該当年齢になります。

    イギリスの教育制度における中等教育は、キーステージ3(Key stage3)とキーステージ4(Key stage4)と呼ばれる2つの段階に分かれています。キーステージ3は11歳から14歳、キーステージ4は14歳から16歳の年齢になります。キーステージ3で義務付けられている必修科目は以下です。

    • 英語
    • 数学
    • 理科
    • 歴史
    • 地理
    • 現代外国語
    • デザインとテクノロジー
    • 芸術とデザイン
    • 音楽
    • 体育
    • 公民
    • コンピューティング

    ほとんどの生徒はキーステージ4では全国共通試験であるGCSE(General Certificate of Secondary Education)と呼ばれる中学校卒業資格のようなものが出される試験を受けることになります。日本の中学生は高校受験という形で試験勉強をしますが、イギリスの中学生は中学卒業資格試験という形で試験勉強をすることになります。

    イギリスの公立中学校にはいくつかの種類があります。主なものとしてコンプリヘンシブスクール(Comprehensive School)、グラマースクール(Grammer School)、アカデミー(Academy)などがあります。コンプリヘンシブスクールは、学力による選抜を行わず、経歴や能力に関係なく、すべての生徒に幅広くバランスのとれた教育を行うことを目的とした学校です。

    グラマースクールは、通常11プラスと呼ばれる入学試験を通じて、学力に基づいて生徒を選抜します。有料で教育を提供する私立学校とは異なり、グラマースクールで子供が受ける教育は地元の自治体からの資金によって運営されています。 より伝統的な学術科目に焦点を当てていることが多く、入学には高い競争率に勝ち抜かなければいけない場合もあります。

    アカデミーは、地方自治体から独立して運営され、公的資金で運営される学校です。 従来の公立学校と比べて、カリキュラム、財政、人員配置などに関してより自由度が高いのが特徴です。学期の長さを変更したり、学費を独自に定めたりする権限も与えられています。2000年に、うまく機能していない公立学校を改革する目的で始まった新しいタイプの学校でもあります。

    https://www.gov.uk/national-curriculum/key-stage-3-and-4

    高等教育 (Further Education)

    義務教育は中等教育の16歳までですが、その後イギリスでも多くの生徒たちが高等教育へと進みます。イギリスでFurther Educationと呼ばれる高等教育は、中等教育後に行われるもので大学の学位ではない全ての教育コースや修了証明が含まれるという考え方になっています。

    イギリスの高等教育にあたるのは16歳から18歳で、この間生徒たちはAレベルなどと呼ばれる高等教育資格を取得するために、シックスフォーム(Sixth Form)と呼ばれる学校やカレッジなどで学びます。これは大学進学に向けた準備段階となります。

    Aレベルはイギリス国内だけでなく海外の大学でも広く認められている教育資格で、これらは大学などに入学するための重要な資格とみなされています。 通常Aレベルの試験を目指して3つあるいは4つの科目を選択しますが、学校によってはより多くの科目履修するオプションを提供している場合もあります。

    日本で言うならAレベルは大学入試センター試験のようなものですね。多くのイギリス人が3科目のAレベル試験で良い成績を収めることを目指していますが、日本で京大に入るために8科目センター受験した私からすると、3科目なんて楽ー!と思ってしまいます。それだけイギリスでは早くから専門性が求められるということかもしれません。

    Aレベルの成績は希望する大学の入学許可をもらうためにも必要になりますが、その後就職などにも影響する卒業資格のようです。特に大手の会社などの場合、大学の成績だけではなく、Aレベルの成績も確認されることがあるのだそうです。

    大学教育 (Higher Education)

    イギリスの教育制度における大学教育は、一般的に18歳以降ということになります。またイギリスでは「ギャップイヤー」と呼ばれる1年の遊学期間を大学入学前にとる人もいます。旅行に出たり、留学したり、

    イギリスには世界的にも有名な大学が多くあり、オックスフォード大学やケンブリッジ大学、ロンドン大学などがその代表例です。日本の大学は4年制の大学が主ですが、イギリスでは3年で学士号の学位取得となっているコースも多くあります。イギリスの学士号には、理系のBScと文系のBAがあります。

    大学院に関しても、日本の修士課程はほとんどの場合2年制となっていますが、イギリスの大学の修士号は多くの場合1年で取得することができます。こちらも文系のMAと理系のMScがあります。筆者自身もイギリスの大学院に行きましたが、日本の大学を卒業した22歳での修士過程進学となったため、イギリスのシステムからストレートで来た子達は1、2歳若い子たちが多かったです。

    イギリスの大学博士課程は日本と同様に基本的に3年です。ただ、博士号は教育制度の中でも研究学位であるため進行やレベルの個人差が大きく、2年で研究を終える人や論文博士となる人もいれば、何年も博士論文を出さない人もいます。一般に休学などしない場合4年が満期となる大学が多いようです。筆者自身も現在イギリスで博士課程をやっていますが、1年目の終了時に研究修士号であるMPhilを取得し、引き続き博士号PhDの取得を目指しています。

    イギリスと日本の教育制度比較

    年齢イギリスの学校イギリスの学年日本の学校日本の学年
    3 to 4保育園Pre-school幼稚園年少
    4 to 5小学校(準備)Reception幼稚園年中
    5 to 6小学校(KS1)Year 1幼稚園年長
    6 to 7小学校(KS1)Year 2小学校1年生
    7 to 8小学校(KS2)Year 3小学校2年生
    8 to 9小学校(KS2)Year 4小学校3年生
    9 to 10小学校(KS2)Year 5小学校4年生
    10 to 11小学校(KS2)Year 6小学校5年生
    11 to 12中学校(KS3)Year 7小学校6年生
    12 to 13中学校(KS3)Year 8中学校1年生
    13 to 14中学校(KS3)Year 9中学校2年生
    14 to 15中学校(KS4)Year 10中学校3年生
    15 to 16中学校(KS4)Year 11高校1年生

    https://www.gov.uk/national-curriculum

    まとめ

    いかがでしたでしょうか?イギリスの教育制度は、日本ともアメリカとも異なり、英語での学校や学年の名称も違うため、しっかりと整理してみないとわかりにくいところがあります。義務教育全体を見てみると、日本よりも就学年数が長いことがわかるかと思います。

    イギリス政府のサイトにある、以下の文書にもイギリスの教育制度について歴史や法律なども合わせてまとめてありましたので、もっと詳しく知りたいという方は英語ですが合わせてご参照ください。

    https://assets.publishing.service.gov.uk/media/5a7ef84040f0b62305b8450d/Additional_text_SR45_2014.pdf

    またイギリスでの教育関係の視察コーディネートなどのお手伝いもさせていただいています。お仕事依頼はお問い合わせページよりお気軽にご連絡ください。