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イギリスNHSでの出産体験談【費用・方法・入院期間など】

    イギリスNHSで妊娠出産体験談

    妊娠出産は女性にとって人生の一大事です。それが海外で出産ということになれば、わからないことも余計にたくさんあるのではないでしょうか?私自身、イギリス在住15年でありながら、初めての妊娠出産ということで色々戸惑いもあり、たくさんリサーチもしました。

    イギリスで妊娠が判明したらまずやることや妊娠初期のエコー業者の利用などについては、以下の記事に書きましたが、この記事では出産までの流れ、費用(NHSは本当に全て無料)、出産方法、入院期間など、私のイギリスでの出産体験談についてお話ししていきます。

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    予定日を過ぎても産まれず、さらにコロナに感染して誘発分娩になり、さらに感染症に罹って緊急帝王切開になったために、さまざまな無痛分娩ツールにもお世話になり、一度の出産とは思えないくらい盛り沢山な経験をさせていただきました(笑)。

    よくも悪くもさすがNHSという経験がたくさんありましたので、今後イギリスで出産される方のために記しておきたいと思います!

    イギリスNHSでの妊娠中の検診

    エコー検査はたった2回

    イギリスNHSで検診を受けていく場合、検診で病院に行く機会はあまり多くありません。ほとんどの検診はミッドワイフと呼ばれる助産師のいる地域のクリニックで行われ、病院でエコー検査があるのは12週スキャン20週スキャンのたった2回です。日本のスタンダードからするとびっくりですよね。

    ただ私は身長168cm、体重48kgという痩せ型の体型のため、BMIが標準より低いという理由で通常2回のエコー検査にあと4回のエコー検査が追加になったのは幸運でした。

    よって28週、32週、36週、40週にも無料エコーで見てもらうことができたのですが、見た目至って健康な私は、エコー検査に出向く度に「なんで追加エコー検診なんでしたっけ?」と聞かれたものでした。追加のエコー検査はBMIが標準より高かったり妊娠糖尿病になったりした人たちが受けることが多いようですね。

    ミッドワイフがダメならGPに頼るべし

    安定期に入って不正出血があったとき、病院の緊急ヘルプラインに電話をしました。色々な質問をされて答えていった末、まあ大丈夫そうだからと様子を見るように言われて、医師の診察を受けることはできませんでした。

    その後も不正出血が時々あったため、次のミッドワイフ(助産師)とのアポの際にもそのことを話しました。その時の検診の結果は全て順調だからということで、特に何もしてもらえませんでした。

    大量の出血があるわけではないけれど、原因は不明の出血がずっと続き、ネットで調べても安定期の出血については不安を煽るものばかり。そんな時珍しくGPの検診が巡ってきました。同い年くらいの温厚な女医さんにそのことを話すと、病院に電話をかけて婦人科医との当日アポをとってくれました。

    一箇所が満足のいく対応をしてくれない時は、病院、ミッドワイフ、G Pいずれかの別のところに頼ってみると良いと思います。

    MAT B1は必ずコピー

    産休申請をするなどの際に、妊娠していることを証明するMAT B1 と呼ばれる公式書類があります。20週を過ぎるとミッドワイフが発行してくれるものですが、私はあるコピーを取らずに求められるがままに原本で産休申請をしてしまいました。

    その後、別の理由で同じ書類の提出を求められたのですが、すでに使ってしまったので手元になく、ミッドワイフに再発行をお願いしたのですが、MAT B1は1枚しか発行できないということでしてもらえず。

    素知らぬ顔で一回発行してもらっているということは言わずにGPにお願いしてみたところ、あっさりと新しい書類を書いてもらえたのでした。こちらについてもミッドワイフがダメならGPに頼ってみましょう。でも最初にもらった時に原本を使う前にコピーをとっておいたほうが良いと思います。

    イギリスでの臨月の過ごし方

    イギリスの陣クス

    日本ではオロナミンCや焼肉を食べると陣痛が来ると言われているようですが、イギリスの陣クスは少し違っています。赤ちゃんの到来を促進すると呼ばれているものには、以下のようなものがあります。

    • ラズベリーリーフティー
    • デーツ
    • カレー
    • クラリセージオイル(お風呂に入れたり匂いを嗅いだりする)

    36週の検診で体重が確か3200gくらいになっていたので、ラズベリーリーフディーとデーツを食べ始めました。

    多少胎児が育ちすぎている感があったので、早く生まれてくれた方が良さそうということで、カレーの頻度もあげました。特に辛いジャルフレイジーを1日おきに食べていましたが、一向に産気づくことはありませんでした。

    出産予定日の検診

    そして40週を迎えて、予定日がやってきました。エコー検診もあるので、念のため入院の準備をして病院に出向きます。エコーで3500gを超えていることが確認された後、助産師によって卵膜剥離の施術が施されました。これは助産師が指を入れて子宮口を刺激することで分娩誘発方法です。

    そこまではまだ想定内だったのですが、この施術によって胎児の心拍が急上昇し、そのまま3人の医師に囲まれて診察されて分娩室に送られることに。このまま心拍数が下がらなければ、緊急帝王切開で出産になりますとのこと。

    私は何もできないのでとにかく胎児の心拍のモニターを見ながらひたすら待つこと数時間。助産師が来てモニターを確認し、胎児の心拍数が落ち着いたので帰っていいですと告げられました。分娩室に数時間いて帝王切開の話までされたのに、あっけなく帰されるの?!となんだか拍子抜けの予定日でした。

    卵膜剥離の効果はなく、全く出てくる気配なし。再び帰って辛いカレーを食べました。

    コロナに感染

    予定日を過ぎて重い体で睡眠も阻害され始めていた矢先、パートナーが風邪気味だと言い始めました。念のため用意していたキットで検査するとコロナに感染していることが判明。それから自宅内別居が始まりました。

    この時点でコロナに感染しても胎児への影響があることは稀とは分かっていても、やはり出産を目前にしてのコロナ感染は避けたいものです。家中を消毒し、パートナーとの接触を避け、自分も毎朝コロナの検査をするようになりました。

    そんな努力も虚しく予定日4日超過にしてコロナ陽性反応。病院に電話しましたが特に何の対処もなく、予定通り誘発分娩が予定されていた41週を待つようにとのこと。ところがその翌日の明け方、トイレに行くと出血があり、再び病院に電話するといますぐ来てくださいと言われ、まだ暗い中車で病院へと向かうことになりました。

    イギリスNHSでの出産誘発

    出血から入院

    コロナに感染しているパートナーは病院立ち入り禁止です。私も病院の入り口の外で待つようにと言われ、お迎えに来た助産師さんにエスコートされて院内に入りました。

    通されたのは、出産予定日に送られた薄ピンクの壁が可愛い分娩室ではなく、なんだか陰気な蛍光灯の部屋。一通りの検査を終えて異常がないことがわかると、家に帰りますか?と助産師さん。コロナに感染しているし、病院にいたほうが安心ということで、入院を選択したことを後から後悔した理由については、この後お話ししたいと思います。

    バルーンによる誘発分娩

    私のパートナーが産まれた時も誘発分娩だったらしく、義母からは「あと数時間の痛みだから頑張って!」というメッセージが来たのですが、それは遠い40年前の話だったことに気づいたのはその数日後。ホルモン剤ではなく、バルーンによる誘発分娩が数日の時間をようすることを私は心得ていなかったのです。

    バルーンを入れてからしばらくして陣痛が始まりました。とは言ってもそれほど強いものではなく、ひどい生理痛くらいの痛み。子宮口もまだ固いとのことです。コロナ陽性のせいで病室から出られないので、たった一人でやることは携帯で動画を見るか、友達や家族とチャットするくらいです。

    とはいえひどい生理痛程度の痛みが5分間隔くらいで来るので、一人で数十時間に渡って痛みから気を逸らすのには、なかなか辛抱を要しました。

    砂漠とラクダの夢

    コロナのために強化された換気システムのためか、病室はかなり乾燥しており、異常に喉が乾きます。持参していた水筒はあっという間に空っぽに。ブザーを押して助産師さんを呼び、水筒にお水を入れてくださいと言うと、コロナ陽性なのでこの部屋のものを外に持ち出せないと言われ、コップいっぱいの水が運ばれてきました。

    予定日に、水分をしっかりとらないと胎児の心拍数が上がりますって注意されたのは一体なんだったのか・・・

    うとうとして眠りに落ちると、そこは砂漠。ラクダに乗ってゆらゆら揺れながら、蜃気楼をが見えてとても暑いなと思っていたら目が覚めて、とても乾燥した病室にいたんだということに気づきました。

    究極の放置プレー

    何度かブザーを押しても誰も来ないことが続き、食事時々忘れられ、手持ちのスナックで凌いでいたものの、数日ともなるとストックも底をつき、さすが無料のNHSと妙に感心。みなさん、念のため食べるものは多めに用意していきましょう。

    それでも痛みと喉の渇きと放置プレーにストレスが限界になり、ブザーを押してから数時間後に現れた助産師、にこんな憂鬱な部屋に一人で放置されて、誘発分娩のプロセスについて何の説明もなく、何度ブザーを押しても水すら十分にもらえないなんてありえない!とブチギレた私でした。

    キレた甲斐があってか、その後ペットボトル10本ほどが運び込まれ、子宮口の開きが小さくまだ時間がかかりそうなので、鎮痛剤でも打って待ったらどう?と宥められたのでした。

    ペチジンで爆睡

    ペチジンの注射を打たれると、頭の後ろが突然重くなって意識が朦朧とし、パートナーにメッセージを送らなくてはと思っている間にあっという間に深い眠りに落ちていましした。

    目覚めて意識が戻ってくるとき、少し気分が悪いような。副作用に吐き気というのがありましたが、吐くほどではないけれど、二日酔いみたいな感じです。

    枕元に置いていた携帯を見ると、8時間が経過していてパートナーからの着信履歴がたくさん。助産さんが入ってきて、パートナーから病院に電話があったから、ペチジンで寝ていますと言っておきましたとのことでした。

    真夜中に天使到来

    それでもまだ産まれる気配なし。耐久戦は続きます。子宮口の開きと分娩室対応の助産師の空きを待ちながら、乾燥と痛みに耐える夜がまたやってきました。真夜中の12時を過ぎる頃、タシャと名乗る天使が私の下に舞い降りました!

    「コロナだからって、こんな部屋にいたんじゃちょっと鬱々としちゃうわよね。」明るく朗らかでかつ確信に満ちた声を持つその若い助産師は、手際良く私の荷物をまとめると(ペットボトルも忘れませんでした!)、居心地の良い広い分娩室に案内してくれました。これはまさに2つ星ホテルから5つ星ホテルへのアップグレードです。

    タシャの説明は全て明確で、痒いところに手が届いています。冷たいお水もコップに注いで差し出してくれます。この人と一緒にお産ならもう安心だと私は胸を撫で下ろしたのでした。

    イギリスNHSでの出産体験

    ホルモン剤による誘発分娩

    バルーンでは埒が開かないため、結局ホルモン剤を投与してさらなる誘発を行うことになりました。ホルモン剤を入れるとかなり陣痛もキツくなるとのこと。ここからは義母が言っていた通り、数時間のはず?!入院してから3日目に突入していたので、もはや確信はありませんでしたが、ようやく分娩に近づいたかという思いでした。

    ホルモン剤の投与からしばらくすると、これまでの痛みとは違うレベルの痛みがやってくるようになりました。ひどい生理痛を幾重にも重ねたような痛みが、間隔を置いてやってきます。無痛分娩を希望していたわけではありませんが、初めからガス&エアは使うつもりでいたので、分娩ベッドの横についている装置を使い方を教えてもらいました。

    ガス&エアによる鎮痛

    NHSではもっとも使用率の高い無痛分娩薬だそうですが、実際やってみると吸い方が結構難しい。最初息を吸うような要領で軽く吸っていたのですが、全く効果が感じられず頻度を上げて何度も吸ってみても痛みはあまり緩和されません。

    助産師さんに相談するともっと深く吸うようにとのこと。胸にしっかりと吸い込むように深く吸い始めると、効果のほどが少し分りました。陣痛の波のピークにタイミングを合わせると少し楽になりましたが、効果のほどは劇的ではなく、痛みが完全に消えるわけではありません。

    しかも私は何度もやっているうちに、タイミングを合わせて吸うという作業に疲れてしまいました。

    医師の指で破水

    これだけ色々なことをやっても、あまり進まないお産。破水も強制的に行われることになりました。若い女医さんが来て、手袋をはめて指で破水させてくれました。痛かったかというと、陣痛の方が痛くてあまり印象にありません。特に卵膜剥離と同じくらいでしょうか。バルーン装着の方が確実に痛かったです。

    その後さらに陣痛は強くなってきましたが、子宮口の開きはまだ4cm程度とのこと。一体あと何時間かかるの?!どこまでもママを焦らすベイビーです。

    エピデュラルの投与

    タシャが話し相手になってくれ、陣痛の波が来る度に、私の太ももに暖かい手をそっと添えてくれるのだけが救いでした。手当という言葉ありますが、彼女の手のぬくもりは、ガス&エア以上に鎮痛の効果がありました。

    でもまた数時間が経過し、ここまでの水なしの数日の影響もあって分娩に至る前にヘロヘロ。体力の限界を感じて、タシャにエピデュラルについての相談を投げかけると、丁寧にリスクも説明をしてくれた上で、使うと良いと思うと私の迷いを断ち切るように肯定的な一言をくれました。

    タシャが手際よくアレンジしてくれて、麻酔技師のチームが分娩室にやってきました。経験豊富そうな黒人の男性と白人の若い女性の二人組でした。脊髄に針を入れる過程はリスクも伴うため少し緊張もありましたし、針を入れられる瞬間陣痛の波に耐えながら動かないように辛抱するのはなかなか難しかったのですが、タシャを含む3人を信頼してエピデュラル投与の準備ができました。

    エピデュラルを使うと自分でトイレにいけなくなるため、カテーテルも合わせて装着になります。それでもこの無痛分娩薬エピデュラルの効果は抜群です。ガス&エアと違って、何もしなくても全く痛みがなくなりました。これなら子宮口が開くのにあと何時間かかっても大丈夫そうです。

    突然の発熱

    ここまで私の出産経験を劇的に改善してくれたタシャでしたが、また数時間が経過して、彼女のシフト終了の時間になってしまいました。帰り際にタシャは、ここまで一緒にやってきたのにあなたの赤ちゃんを取り上げられなくて本当に残念、と言ってくれました。残念なのは寧ろ私の方。痛みを緩和してくれた彼女の手の温もりは一生忘れないと思います。

    この時点での子宮口の開きはまだ5cm程度。それでもあとは子宮口が十分開くまで待つだけ、とたかを括っていたところ、何やら突然寒気に襲われました。熱を測ると39度近い高熱。

    タシャの代わりにきた別の助産師に寒いので毛布か何かを持ってきて欲しいとお願いすると、毛布をかけると熱が上がるからダメと冷たく一言。お産のために分娩室は冷房が入って結構涼しい設定になっているため、ブルブル震えながら耐えるしかありませんでした。

    緊急帝王切開

    それから1時間ほどして、テキパキした頭の良さそうなインド系の女医さんが分娩室に入ってきました。高熱で胎児の心拍が上がりすぎたから、緊急帝王切開で出しますよ、と。パートナーに電話だけさせてくださいと慌てて電話をかけている間にもベッドが動き出し、あっという間に手術室に運ばれてしまいました。

    「え、これだけ色んなことをした後に、結局帝王切開なわけ?!」というのが正直な感想。だったら予定日に心拍が上がりすぎたところで出してもらってれば、3日間に渡ってこんなに色々痛い思いしなくてよかったんじゃ、というツッコミは置いておくことにします。

    手術室にはたくさんの人がいて、私の頭に一番近いところにいたのが、エピデュラルの時とは別の黒人の麻酔技師さん。頼れる雰囲気の方だったので、この方をパートナーがいない代わりに頼りにすることに。しかも頭の良さそうなあの女医さんなら大丈夫でしょうという根拠のない確信がありました。

    案の定、すでにエピデュラルを入れていたので、麻酔をかけるのもスムーズで、あっという間に準備が整い、何かゴムのようなぶよぶよした感じだけがあって、赤ちゃんが出てきました。その泣き声はとても可愛く少し高いピッチ。「え、女の子?!」

    性別は生まれてからのお楽しみにしていたのですが、トラブルが色々あったため、こんなに迷惑かける胎児は男の子に間違いない!と数々の助産師さんから言われていたので、私も完全に男の子だと信じ切っていたのです。

    麻酔技師さんから「名前は?」と尋ねられ、自分だけで女の子だった場合はと考えていた名前「まりさ」と答えると、手術室のみんなが「Marisa!!」と合唱。その場にいなかったパパの意見は全く考慮されず、そこで子供の名前はまりさに決定となりました。

    帝王切開後の吐き気と水乞い

    ところが、赤ちゃんとの感動のご対面の瞬間を待っていたところ、突然具合が悪くなり、吐き気に襲われたのです。何やら術後に投与された薬が合わなかったようで、ものすごい喉の渇きと吐き気で、水ください!というものの、麻酔のせいで水はもらえず、ガーゼのようなもので口にたらされた水滴は何故か塩辛くて余計に喉が渇く有様。

    NHSはまた水くれないわけ?!となりつつも、もう喋る記録も、切れる体力も残っておらず、パートナーの立ち会いもなし、自分もシャットダウンして感動のご対面すらまともに出来ない、ドラマのような感動からは程遠いお産となったのでした(苦笑)。

    イギリスNHSでの産後の入院

    術後のリカバリールーム

    手術室からリカバリールームと呼ばれる別の部屋に移されるてしばらくすると、なんとか体調は正常に戻ってきました。物静かで穏やかな看護師さんが身の回りの世話をしてくれています。

    私のいるベッドの隣に置かれた透明のケースの中に、生まれたばかりの赤ちゃんが静かに横たわっています。看護師さんの助けを借りながら、初めての授乳。生まれて初めて抱く赤ちゃんは、透明すぎる瞳が本当に美しかった!でも思ったよりもずっしり重かった!

    それもそのはず、41週で生まれた娘は3820gありました。今思えば妊娠中、家に体重計もありませんでしたし、検診で体重検査があったことも一度もありませんでした。ワッフルを食欲に任せて食べていた故の成長に間違いありません。

    無料のプライベートルーム

    新生児も眠っている夜中。また誰かが部屋に入ってきて、別の部屋に移るようにと言われました。またあの陰気な部屋に戻されるのか?と一瞬躊躇しましたが、仕方ないので指示に従うことに。

    カテーテルも装着されたままなので、尿の入った袋を自分で持って歩かされます。というかまだ麻酔が切れてまもないので、足元もおぼつかないし、帝王切開後が開くのではないかと不安でした。

    案内された部屋は、窓が病院内の吹き抜け部分が見える部屋でした。コロナで隔離状態なのでもちろんプライベートルーム。チェルシー&ウェストミンスター病院のNHSプライベートルームは確か一泊150ポンドくらいからなので、無料で使えるなんてラッキーと思えたのは、それから数ヶ月が経過してからのことです。

    髄膜炎の疑い

    イギリスNHSで出産すると、産後すぐ翌日にでも退院させられるという話を聞いたことは多いと思います。でも帝王切開の場合は少し長くて、3日程度と言われています。

    ところがまた問題発生。産後の血液検査の結果、私も赤ちゃんもコロナではない原因不明の感染症に罹っていることが判明したのです。髄膜炎の疑いもあり、娘は2度に渡って脊椎からサンプルを取る検査に送られましたが、検査は2度とも失敗。

    毎日小児科医が検診に来るだけではなく、朝晩構わず数時間おきに検査の人が来るため、赤ちゃんが寝てようがなんだろうが私は全く休む時間なし。相変わらず食事は言わないと出てこないこともあり、ブザーは何かが必要になるよりも早めに押すべきだということを学んだのでした。

    当てにならないミルクの追加量の目安

    幸いにも、原因不明の感染症の症状は私にも娘にもなかったのですが、私にとってそれよりもはるかに深刻な問題だったのは、娘の異常なお腹の空きよう様です。産後すぐに出るのは初乳と呼ばれるもので、いきなりたくさん出るものではありません。

    病院主催の事前の母親クラスでも、生まれたての赤ちゃんの胃のサイズはさくらんぼ程度なので、たくさん飲まなくてもすぐお腹がいっぱいになると教わっていました。それなのに、お腹が空いた!と全く泣き止まない・・・。

    助産師さんや小児科医に聞き、20mlの追加のミルクをあげてみるも、あっという間に飲み干して全く泣き止みません。もっとあげてもいいけど、専門家に言われた量以上にあげて吐いたらどうしようと不安になります。

    それでも数日間全く寝られず困り果てた私は、思い切って60mlまであげてみることに。すると泣き止んで眠りに落ちた!60mlって、さくらんぼサイズじゃないですよね。

    晴れて退院

    出血して病院に駆け込んでから8日後の夕方、晴れて退院になりました。最終日はほぼ1日単に医師が退院許可を出してくれるのの署名待ちだったようなものですが、それもイギリスNHS。

    コロナの監禁で8日間全く外の空気を吸っておらず、外の風景すら見ていなかったので、刑務所からの出所のような退院でしたが、母子ともに健康で家に帰れたことが何よりです。

    まとめ

    NHSでの出産は完全無料です。日本だったら、無痛分娩や帝王切開、プライベートルームなどどんどん料金加算されていったところでしょうが、それも含めて全て無料でした。

    水やご飯が出てこないという多少人権侵害的な経験もありましたが、帝王切開の傷は素晴らしく綺麗で、あのインド系女医の腕は確かだったとお風呂に入るたびに思います。

    産後の感染症にもとことん対応してくれ、時には対応の悪い助産師たちに対する愚痴も聞いてくれた小児科医たちにも感謝しています。そして何より、天使の助産師タシャのことは一生忘れません。

    イギリスNHSでこれから出産される方々、タシャのような助産師が分娩担当になってくれることを祈っています!